夏目友人帳 陸 第7話 「ゴモチの恩人」
☆前のお話は → 6期 1~6話あらすじまとめ
★5期はこちら →「夏目友人帳 伍」

眠そうにしている夏目に、もう寝るのかとニャンコ先生。昨日は大変だったのに、どこに行っていたのかと聞くと、飲み会に決まってるだろうがと答えた。何があったとニャンコ先生に聞かれて夏目が話す。

昨日、夜中に天井から妙な音がして、夏目レイコ、いるなら出て来い。出て来ないとこの家ごと潰してやるぞと声がした。外に出てみると、デカい妖怪だった。

話を聞いてやるからついて来いと走って家から離れた。お前を喰って名をあげてやると追いかけてくる妖怪をなんとかまいた。

と、話していると天井からまた音がした。昨夜の声とは違うようだ。
?:「夏目様、夏目レイコ様、おいでですか」
先生:「レイコのやつ、どれだけ恨みをかっているのだ」
夏目:「悪いが祖母のレイコは他界したんだ」
?:「他界? それはそれは、悲しきことで」
夏目:「レイコさんに何か用か。俺は孫の夏目貴志だ。名を返すことならできるけど」
?:「名を? いえいえ、レイコ様に少しお世話になったことがありまして、お礼をお伝えしたく参ったのです」

夏目:「お礼?」
先生:「レイコに?」
夏目:「お礼参りじゃなくて?」

ゴモチ:「私はゴモチと申します。本日はお礼とご報告があって参りました。正直、レイコ様とはそれほどおつき合いはないのです。しかし恩人であるのです」

ゴモチ:「私はここから少し離れた七房の森に住んでおります。そこへある頃から人間の娘がやってくるようになりました」

何をするでもなく、ただブラブラ歩いたり、小高い草原の上で居眠りをしたり。風のうわさでその娘の名前はレイコと。
また人の子が来ている。こんな山の中に何をしに来るんだろうと妖たちが話していると、
レイコ:「昼寝しに来ているのよ。騒がしくしないでもらえるかしら」

妖怪を見ることができる人の子に森の小物たちは大騒ぎ。昼寝をしているレイコに小石を投げると、大きい岩で仕返しされそうになった。
夏目:「正当防衛だな」
先生:「過剰防衛だ」
ゴモチ:「とまあ、我ら妖者を恐れぬ不思議な人の子でした」

レイコはものすごく妖力が強くて神格に近いものまで従えることができるらしいと聞いてきた者がいて、それが本当ならあのことを相談してみてはと話していると寝ていたレイコが起きた。
「ちょっと、人の枕元でゴチャゴチャと。いい加減にしてもらえないかしら」
「元々はここは我らの森だ。文句があるなら出ていけばよかろう」
「あ? それは、そうだけど」
レイコと話していると大きな音がした。

行ってみると大木が折れていた。

「きっとこれも、センキ様とヒャッコ様の仕業だ。森で最も力が強いそのおふたりが、最近ひどいケンカをしておられる。それでこうして暴れまわり我々は困り果てておるのだ。レイコとやら、お前も力が強いと聞く。おふたりにケンカをやめるよう話してもらえぬか」

ゴモチの話を聞いて、それは名案だ、恐ろしくて我らにはどうにもできないから人の子よ頼むと妖怪が集まってきた。自分たちのことでしょ。面倒は御免よとレイコ。

中には人の子になど何ができると言う妖怪もいた。また大きな音がした。

ゴモチはとにかく来てくれとレイコを洞窟に連れて行った。

「赤き帯がセンキ様。青き帯がヒャッコ様だ」
私は関係ないと言っていたレイコだが、洞窟の奥に誰かいるのを見つけて、あれは何? と聞いた。

「ああ、美しいだろう。キブネというんだ。センキ様とヒャッコ様に捕まっているのだ。おふたりのうちどちらか優れている方の嫁にするのだと」
ふたりには逆らえないから、かわいそうだけど仕方がないんだとゴモチが言うとレイコはキブネのところへ。

レイコ:「ねえ、あなた。あなたは納得してるの? どちらかのお嫁さんになりたいの?」
キブネ:「いいえ。もったいない申し出ですが私は帰りたいのです」

花嫁に勝手に近づいているのは卑しき人間だとセンキとヒャッコが来た。
レイコ:「ねえ、あんたたち。この子をはなしてやりなさいよ。とてもくだらないことでケンカしているらしいじゃない」
ヒャッコ:「くだらないだと?」
レイコ:「そうよ。どちらが花嫁をもらうのに相応しいかですって。捕えてないと逃げられる時点でどちらも相応しくないわよ。バカバカしい」

「まあいいわ。誰よりも強い者が花嫁をもらえるのね?」

「ならば私も参戦するわ。花嫁は私がもらう」
「負けたら私を食べてもかまわないわ。森を守りたいとか、この子を助けたいとか、そんなんじゃないけれど、勝って高慢なあなたたちの泣きっ面を見たくなったわ」

勝手なことを言うなと怒るセンキとヒャッコ。怖いなら不戦敗にしてやってもいいわよと言ったレイコだが、もう夕方じゃない、帰りが遅いととても叱られるのよと家に帰った。
「じゃあ、また来るから。勝負はその時ね」

先生:「無茶苦茶だな」
ゴモチ:「そう、無茶苦茶なお方でした。我々はきっと逃げたのだと思いましたが、レイコ様は翌日には戻ってきてくださったのです」

センキに私と勝負しましょうとレイコ。今ヒャッコを呼んでやるとセンキが言うと、1対1の勝負は怖いの? と言った。
「いいわよ。みんなを呼びましょうか。センキは1対1では勝負できないんですって~」
いいだろうとセンキが言うと勝負方法も私が決めるとレイコ。
「あなたの腕って、とても立派。この私の細腕に免じていいでしょ」

「あの高い木のてっぺんに木の実があるでしょ。あれを先に取ってきた方の勝ちってのはどう?」

ゴモチ:「お、おい、やめておけ。鈍そうに見えてセンキ様は...」
センキ:「ハハハ、いいぞ、勝負だ」
レイコ:「じゃあ、勝負開始」

木に登りはじめるセンキ。

レイコは足元の木の枝を投げた。

命中。

「悪いけど勝負は勝負。私の勝ちよ」

「勝ったぞ。卑怯だけど人の子が!!」「卑怯だけど、とりあえず勝ちだ!!」

しかし確かに木登りとは言っておらぬかとセンキ。レイコはお詫びにこの実をあげるわと差し出した。
「あなたが堂々とした妖だから通用した作戦ね。でも約束通りキブネからは手を引いてちょうだいね」

センキ:「妙な小娘だ...」
ゴモチ:「短気なセンキ様も呆れて毒気を抜かれたようでした」

ヒャッコを呼び次はあなたの番よとレイコ。ヒャッコが先によい勝負方法を思いついたと言い出した。
ヒャッコ:「センキが負けた今、私が勝てばこの森で一番強いのは私。キブネとの祝言のごちそうとなるものを集めるのだ」

ヒャッコ:「この森では縁起物とされる、イガの中に3つ実がある栗を多く集めてきた方を勝ちとしよう。夜明けまでにあの一本木の下へ」
レイコ:「ちょっと、待ちなさい...」
ヒャッコ:「我ながら名案。よろしいな。では、勝負」

どうするのだ、策はあるのかとゴモチが聞くと、ないわ、油断しちゃった。栗を拾ってまわらないとねとレイコ。人の子などに期待してしまったのがそもそもと妖たちが言い出すと、やかましいわよ、弱虫妖怪たちとレイコは言った。

レイコ:「今が好機だとわからないの。この夏目レイコほどの強者を利用してあのヒャッコを負かす最初で最後の機会かもしれないって言ってるの。今、負かしておかないと大変なことになるんでしょ。さあ私を勝たせなさい。イガグリを集めて私のところへ持ってきて。夜明けまでに一本木の下へ。あなたたちは、こんなにいる。負けるはずがないわ」
よし集めるぞと走り出す妖たち。レイコはウサギ顔の妖怪に裏切ったりしたら尻尾の毛をむしるわよと言って一本木の下で自分の代わりに栗を受け取っておくようにと指示した。
ゴモチ:「お前はどうするのだ」
レイコ:「私も栗を拾うのよ。当たり前でしょ。私、負けるの嫌いだもの」

レイコ:「痛っ、せめて柿にしてもらうんだった」
ヒャッコ様は森を知り尽くしているから栗も山のように集めてくるだろうと言い、降りると言い出した妖怪がいた。ゴモチが止めようとするとレイコは放っておきなさいと言った。

「やりたくない者はやらなくていいのよ。そういうものでしょ。繋がりなんてすぐ切れるのが当たり前なんだから。これは私がやってみたくてやってることなの。うまくいっても失敗しても...負けるのは嫌いだけど、やるって決めたことはやり通してみたいだけなのよ。それにキブネにも期待させるようなこと言っちゃったしね」

夜になった。人の子は帰らねば体がきついのではないか。それに叱られるとも言っていただろうとゴモチが言うと、今日は家の人も帰りが遅いから日が昇ってすぐ帰ればなんとかなるわとレイコは答えた。
レイコ:「でも、気の毒な人たちなの。こんなお荷物押し付けられて...明日帰れるかしら」

ゴモチ:「その時、なんとなく感じたのです。レイコ様は負けることというより、帰れなくなることを恐れていないのだと」

レイコ:「あら、結構集めてくれたのね」
ゴモチ:「しかし、どうだろう。これでは...」
思ったより持ってきてくれるやつが少なくてとウサギ。レイコは構わないわと言った。
レイコ:「あとは私がヒャッコの到着を待つから、あなたたちは帰っていいわよ」

しかし勝てるだろうか。ギリギリという感じな気がとゴモチが見るとレイコは寝ていた。

おーい、と栗を抱えた妖怪たちが集まって来た。




ヒャッコ:「無念。私の負けか...」

ゴモチ:「こうして勝負は着き、ヒャッコ様とセンキ様は、森の者たちの気持ちを知って反省なさったようでした。約束通りキブネはレイコ様がもらい受けたのですが...」

「キブネ、あなたは自由よ。帰りたい所があるなら帰りなさい」

「素敵ね、キブネ。帰りたい所があるなんて」

レイコ:「もう行くわね。家の人が起きてしまう」
ゴモチ:「レイコとやら。お前またこの森へ来るのだろう」
レイコ:「楽しかったけど、顔見知りのいる森なんて落ち着かないわ。さようなら」
ゴモチ:「それ以来レイコ様が来ることはなくなりました。森のみんなは時々、レイコ様が来ないかとソワソワしていたのですが...」

『何かと繋がれるかもしれなかったレイコさん。でも、たぶん気付けなかったのだろう。いろんなものから距離を取り過ぎて...いや、ひょっとしたら、気付きたくなくて...』

先生:「ほんとに、どうしようもない女だな」
夏目:「うるさいぞ、先生」
ゴモチ:「それでも私たちの恩人なのです」
夏目:「祖母のこと、あまり聞ける機会がなかったから。話してくれてありがとう、ゴモチ。ああ、そういえば報告って?」

ゴモチ:「ああ、それは私事なのですが。その後、キブネと一緒にレイコ様を待ったり捜したりするうちに互いに思い合うようになりまして。このたび祝言をあげることになり、式へのご招待をと」
先生:「そうか、祝言...」
「え、え~!!!」


『酒につられた先生とおよばれした森は、どこか楽しくて懐かしくて』


『レイコさんが気まぐれに助けたキブネはとても美しく』

『きらきらとしたこの光景をレイコさんにも見せたかったと少しだけ悔しく』

『少しだけ誇らしく思った』
☆次回 「いつかくる日」
【感想】
きれいなお話でした。レイコさんの話はかわいそうなところもあるし、人間の儚さも改めて感じるし、ちょっと寂しいんだけどね。ゴモチは宇宙人みたいとか思ったけど、とてもいい妖で、美しいキブネをお嫁さんにできてよかったね。センキとヒャッコも根が悪いやつではなかったね。負けも認めたし祝言にも仲良く出席していたね。夏目もレイコさんの話が聞けたしおよばれもしてよかった。みんなきれいだった。
