夏目友人帳 伍 第11話 最終回 「儚き者へ」



            

☆前のお話は→ 第1話~第10話 あらすじまとめ

夏目は期末テスト期間中で妖怪たちのところに姿を見せない。そろそろまたおかしな騒動に巻き込まれて楽しませてくれるのではと期待していた中級たちは退屈していた。三ツ岳の白霧花が咲いたと聞き、短命な花なので散らぬうちに見に行こうと話した。

   

期末テスト終了。冬休み前にみんなでどこかに遊びに行こうと田沼。冬休みは西村は塾の冬期講習があるし北本は家の手伝いで忙しい。なかなかタイミングが合わないなと夏目。どこに行きたいか考えておくことになった。

   

帰り道、みんなと別れてひとりになると中級が現れた。三ツ岳の白霧花を見たことがあるかと聞かれて、ないと答えると、思った通りの無知と中級。

中級:「岩肌に咲き誇る姿はそれはそれは美しいのですぅ。ほんの短い間にしか咲かぬ短命の花ゆえ滅多に見られないのです」

無知な夏目さまに見せてあげると無理やり連れて行かれた。

   

中級:「もう少しですぞ夏目さま。目指す花はあの先です」

   

夏目:「え~」

   

夏目:「これはもう登山だ」

   

中級:「夏目さま、さあさあこちらへ」
夏目:「寒い。せめて上着くらい持ってこれたら」
中級:「ここから下をご覧ください」

   

夏目:「わあ~」

   

中級:「どうです、美しいでしょう」
夏目:「ああ」

   

夏目:「ありがとう。知らなかったよ。こんなところがあったんだな」

   

中級:「さあさあ夏目さま、花見酒といたしましょう」
夏目:「だから、俺は酒が飲めないっていつも言ってるだろ」

   

夏目は風邪をひいて熱を出し寝込んでしまった。

   

先生:「病弱なやつめ。お前はすぐに病をしょい込むのだな」
夏目:「すまない、先生。世話をかけて」
先生:「フン、世話をするつもりなどないぞ」

   

夏目は学校を休んだ。中級は犬の会のみんなに夏目と白霧花を見に行った話をする。夏目が喜んでいたと聞いて、それはよかった、いいものを見たとみんなは言うが、ここ2日ほど夏目の姿を見ない気が。

   

先生:「なんだ、お前たちの仕業だったのか。お前たちが連れまわしたせいで夏目は今、風邪をひいて寝ている」

   

中級:「ええ~」

   

中級:「ど、どういうことだ。狸や猪だってあんなところに連れて行ったくらいで病にはならぬぞ。狸や猪以下ということか。なんて弱っちい。哀れすぎますぞ夏目さま」
中級:「とはいえ我らとて責任を感じぬわけにはいかぬ...そうだ、四峰のオオツノさまのところへ行ってみよう。以前、大沼のカッパの子が熱さましをいただいて病を治したと聞いた」

   

  中級:「オオツノさま、おいでですか」
オオツノ:「なんだ、おぬしらは」
  中級:「オオツノさまは熱さましの薬草をお持ちだとお聞きしたことがあります。少しいただけませぬでしょうか」

   

オオツノ:「我は今、機嫌が悪い。先日の長雨で石灯籠が倒れてしまったのだ。とっとと去ね」

   

オオツノ:「いや、ちょうどよい。お前たち、灯籠を戻せたら薬草を分けてやろう」
  中級:「おお、ホントでございますか。ぜひともお役目を我らに」

   

  中級:「無理」
オオツノ:「帰れ」

   

   

熱が下がらない夏目。天井が歪んで見えた。

『そういえば、前にもあったな』

   

『子どもの頃、預かってもらっていた家で、風邪をひいて寝ていると天井の模様が目や顔に見えて怖かったんだ』

   

『それらは、ほとんどが熱のせいで見た幻だったけど』

   

『中には本物もいて』

   

『あの頃はまだ、あれらが何なのかよくわかっていなかったこともあって、とても怖かったのを思い出した』

   

塔子さんが玉子酒を作ってくれた。

   

『塔子さんの玉子酒、全部飲んだら後で先生が怒るだろうな。あんなに飲みたがっていたから』

   

でも全部飲んだ。

夏目:「すみません、心配かけて」

   

塔子:「フフ。改めて思うけど、自分が風邪をひいた子の世話をしてるなんて不思議な気分ね。今は余計なことは気にしないで、おやすみなさい」

   

中級は石灯籠を直していた。が、まだまだ先は長い。

   

滋さんはイチゴを買ってきてくれた。

   

   

先生:「なんだと~玉子酒を全部飲んでしまっただとぉ~ !」
夏目:「大声を出さないでくれ先生。まだ頭が痛いんだ」

   

先生:「フン。今日のところはこれで許してやるか」

   

先生:「玉子酒は明日いただくことにしよう」

   

先生:「夏目、当分治る必要はないぞ」
夏目:「そんなわけにはいかないよ。ハァ」

   

(-_-)zzz 登校する夏目。風邪治ったのかと西村が声をかける。

   

席に着こうとすると夏目の席にちょびが座っていて以前からずっと自分の席だと言った。

   

お前の席は一番前だろうと言われて席に着くと隣にヒノエ。紅峰さんまでいた。先生が来たよと言われて見ると、

   

夏目:「せ、先生 !」

   

「そう、私が先生だが、何か?」

   

「授業を始めるぞ。おはよう」
「おはようございます。ニャンコ先生」

   

夏目:「このままでは学校がニャンコ先生に乗っ取られる」

   

窓の外を見るとレイコさんが歩いて行くのが見えた。夏目は教室を抜け出す。

   

校庭に出てレイコさんを探す。

夏目:「どこ行ったんだ。早く先生を止めないと」

   

妖怪:「夏目さま。夏目レイコさま」
夏目:「いや違う。俺は...」

   

夏目:「レイコさん !」

   

レイコ:「だって、ひとりでいれば守らなくていいでしょ」

   

レイコさんは去って風が吹いた。寒い。

   

目が覚めた。部屋の窓が開いていた。

   

「わあっ」

   

夏目:「先生、なんとかしてくれ」
先生:「ああ? なんだそいつは」

   

妖怪:「夏目さま、名前をお返しください」
夏目:「すまない。今は無理だ」

   

悪化してしまった。

   

   

中級は引き続き灯籠直しを頑張っていた。

   

夏目の欠席が長引いているので、このまま二学期が終わったら次に会うのは来年だと話す友だち。みんなで見舞いに行こうと西村は言ったが大勢で行くのは迷惑じゃないかと北本。

   

もし明日も休んでいたら俺が帰りに様子見がてら行ってくるよと田沼が言った。

   

本当はみんなで行けるとよかったけどと笹田。それならと多軌が言った。

   

中級が訪ねてきた。

中級:「熱さましに効くと噂の薬です。ささ、どうぞ」

   

夏目:「ありがとう...うっ、苦いなこれ」

   

中級:「昔から良薬は口に苦しと申します」

   

夏目:「そうだな、効きそうだ」

   

中級:「いや~まったく世話のやけるお方だ。あんな面白き暇つぶしを早々に失うわけにはいかんからなあ...早く良くなるといいな」   

   



   

   

塔子:「それだけ食欲があるなら、もう大丈夫ね貴志くん」
夏目:「はい、明日は学校に行けそうです」
塔子:「ちょっと長引いたから心配したけど、よかった」

   

田沼が来てくれた。せっかくだから上ってもらったらと塔子さん。

   

田沼:「これ、昨日みんなで神社に寄ってもらってきたんだ」

   

田沼:「夏目の欠席が長引いてると聞いて多軌が言い出して。でも、渡す前に治ってよかった」

   

夏目:「ありがとう。うれしいよ」

   

田沼:「夏目、また妖怪のことで何か変なことに巻き込まれたりしてたんじゃないか?」
夏目:「今回は本当にただの風邪なんだ(きっかけは中級たちだったけれど)」
田沼:「本当は迷ったんだ。妖怪のことだったら俺が来ても役に立てないかもしれないし」
田沼:「でも力になれるとしたら俺しかいないだろうと思った。だから俺が行くって言ったんだ」

   

夏目:「そうか、ありがとう田沼。俺はこの家に来てから、大切なものがたくさん増えて、でもどうすればそれらを守れるのかわからなくて...」
夏目:「前に祖母のことを話しただろう」
田沼:「ああ。同じように見える人だったって」

   

夏目:「熱でうなされているとき、夢の中でレイコさんに言われたんだ。ひとりでいれば守らなくていいって」
夏目:「でも、俺が守りたいと思っている人たちに知らず知らず助けられていたように」

   

夏目:「祖母のまわりにも彼女を思う友人がたくさんいて...そのことをもう彼女に伝える術はないけれど、俺は覚えていたい」

   

夏目:「だからこんなふうにレイコさんのことを話せる友人がいるだけでも、俺にとってはとても助かることなんだよ」
夏目:「本当はみんなにも話せるといいと思う。でも...」
田沼:「いつかそうなるといいな」
夏目:「ああ、そうだな」

   

ヒノエ:「何、こいつを夏目に飲ませたのかい?」
 中級:「いやあ、苦労した苦労した~この薬草を手に入れるのに我らがどれだけ骨を折ったか」
ヒノエ:「こいつは人間には効かない薬だよ」

   

中級:「マジ !?」

   



   

   

   

妖怪:『お前が臥せっていては、からかう相手がおらず、つまらぬではないか』
夏目:『ああ、あの時、あいつは...』

   

妖怪:『早くよくなれ。小さく儚き者よ』

   

夏目:「昔、気付けなかったことに今は気付けるようになってきた。そのことで余計なことも背負い込むし大変な目にも遭うけれど、気付かないまま過ぎ去るよりもずっといい」

   

中級:「夏目さまは今日も寝とるのか。しょうもないお人だ。見舞いに白霧花でも摘んでいくか」

   

「来た、来た。おはよう、夏目」

   

夏目:「おーい、中級」

   

夏目:「ここにいたか」

   

夏目:「聞いてくれ、やっと熱が引いたんだ。中級たちがくれた薬が効いたみたいだ」

   

夏目:「ありがとう」

   

中級:「アホなお方だ」

   

中級:「いや、アホなのは我らか」

   

   

   

「いつか散るとわかっていても」

   

「性懲りもなく見入ってしまうのだから」

      

【感想】
優しい物語をありがとうございました。第10話がとてもいい話だったので最終回に期待しすぎたのか少し物足りない感じがしたけど、中級たちが活躍していて楽しかったです。犬の会の妖怪たちや学校の友だちもみんな出てきて、きれいにまとまった感じかな。
実際には最終回といっても、風邪をひいて、周りの人たちが心配して、治って。というだけの話だし、毎回そんなにびっくりするようなエピソードはないんだけど、優しさだけで感動できるっていうのも凄いね。
原作はコミックが出ていたら読むくらいの感じで、連載されている雑誌は見たこともない不真面目な読者で、アニメも続きが早く見たくてというような気持ちはなかったけど、毎週あったかな気持ちになれる気がして楽しませてもらいました。季節がピッタリだったのもポイント高いよね。夕暮れの雰囲気もよかった。
夏目友人帳5-11-99

★来年の6期放送が決まったようです。まあ1~4期も分割2クールを2回みたいな感じだったから少し予想はしていたけどね。来年の春かな夏かな。楽しみにしたいと思います。


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夏目友人帳 21 [ 緑川ゆき ]