夏目友人帳 伍 第2話 「悪戯な雨」



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☆前のお話は→ 第1話「変わらぬ姿」

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学校の帰りに雨に降られた夏目たち。西村は知らない女子高生にカサを貸してもらって顔を赤らめる。

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夏目が走って帰ろうとするとタオルが飛んできた。返せと声がして少女の妖怪が現れた。お前のかと聞いたが妖怪が見えない西村が来て風邪をひくから濡れないようにしろと引っ張られた。北本も早く来いよと呼ぶのでそのままタオルを持って帰ってしまった。

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タオルを持って来てしまったことをニャンコ先生に話す。やけにみすぼらしいタオルだなとニャンコ先生。返しに行くと言う夏目に面倒だ放っておけと言った。

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そうもいかないだろう。それに取り返しに家に来られても困るからなと階段を下りたらもう来てた。何でこんな簡単に入られるんだと先生に怒る夏目。名を返してもらいに来る小物もいるから緩めにしているんだ。勝手に追い返すと怒るだろうがとニャンコ先生は言った。

玄関に子供の下駄。やっぱりさっきの妖怪か。一度部屋に戻る。このタオルは西村たちにも見えていたから元は人間の物。と机の下から手が。何かいる。

お茶を取りに行くふりをして部屋の外から覗くと少女の妖怪が出て来てタオルを手に取ると、あった、良かったと言った。

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ニャンコ先生が、小娘、それを持ってとっとと帰れと言うと、お餅のオバケだと押し入れに逃げ込んだ。タオルを持って来てしまったこと、脅かしてしまったことを夏目は謝り、タオルを持って帰るように言うと、夏目に頼みがあって来たが大事な手拭いが飛ばされたのでと少女の妖怪(以下、少女)は言った。

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お前の言う通り、この手拭いは人の物だ。持ち主に返したいから一緒に探してくれと少女。こういう顔のいい男だと絵を差し出した。無理だ。あんないい男はめったにいないからすぐに見つかるはずという少女に、じゃあ自分で探せるだろうと夏目。付き合う義理はないぞと言うと、呪ってやりたい相手や祟ってやりたいやつは私が全力でどうにかしてやるから頼むと言った。

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残念だが力になれないと夏目が言うと、お願いです、他にどうすればいいのかわからないと少女。こんな時にどうすればいいのかわからない夏目だったが、話を聞くくらいならできるから、そこから出てくれないかと言うと、本当ですか夏目さま、と少女は出てきた。

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翌日、滋さんと塔子さんに出かけてきますと言うと夏目はニャンコ先生と少女と出かけた。初めての町だった。こんなに遠くからひとりで来たのか。

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町はずれに来ると、少女は指をさして言った。あのバス停とやらで、あの人と出会ったのです。それは古くからあるバス停のようだった。出会ったというのはいつ頃かと夏目が聞くと、50年ほど前ですと少女は答えた。

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あの人はここへ長年通って来ていたが、一年くらい前から姿を見かけなくなってと少女。50年近く利用していたバス停があるなら、このあたりに住んでいるかも。引っ越した可能性があるけど元の家がわかればと夏目たちは付近を探してみる。

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もう一度その姿を見ることが叶ったら、今度こそ返さなきゃと少女。名前がわかれば誰かに尋ねることもできたが歩き回って疲れた夏目は少し休憩すると言って座り込んだ。人については何も知らないという少女は、人とはどれほど生きることができますか、あの人は生きているでしょうかと夏目にたずねた。

ごめんな、わからないよ。けれど、会いたいなら探してみようと夏目。少女は、はいと答えた。もし失ったのなら、失ったことを知るのも、きっと大切なことだ。

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少女が、あの人の匂いがしますと駆け出した。女学生が歩いて来た。この小娘からあの人の匂いがしますと少女。もしかすると孫かもと思い夏目は声をかけた。

あなたに、おじいさん、いませんかといきなり聞いてしまった。この先のバス停でよくお会いしたが最近お見かけしないから心配でと言うと、友だちにどうしたと呼ばれた女学生は失礼しますと行ってしまった。

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ごめん、話しかけ方を思いっきり失敗したと夏目。でもまた出直して何とか話を聞いてみるよと言うと、ありがとうございますと少女は言った。

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教室で夏目がため息をつくと、夏目くんまでどんよりしちゃってと笹田に言われた。後ろの席では西村が借りた赤いカサを返しに行ったらあの子は彼氏と一緒だったと落ち込んでいた。

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放課後、ニャンコ先生と女学生を待つ夏目。再び駆け寄ると、すみません、少しでいいので話を聞いてくれませんかと言った。何でそんな嘘をつくの、祖父に聞いたら、あなたくらいの男の子とは会ったことがないと言っていたと怒る女学生。それを聞いた夏目は、良かった、ご健在なんですねと言った。

とにかく、もう声をかけてこないでくださいと去る女学生。待ってと言う夏目を少女が止めた。ありがとう夏目さま。良かった、あの人まだ生きてた。それがわかっただけで、もう十分です。

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私のせいで嘘つき呼ばわりされてしまった。ごめんなさいと謝る少女。夏目は、大丈夫だよ。それより、どんな人だったんだい。君の探している人はと聞いた。

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50年ほど前のある雨の日。気持ちいい雨にはしゃいで走り回っていると、こら、何してるんだ、風邪ひくよ、こっちへおいでと男の人に声をかけられた。バス停で濡れた髪を拭いてくれて、そのタオルはあげるから、ちゃんと拭いて風邪ひかないようになと言うとバスに乗って行った。

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持ち帰った手拭いは何だか暖かくて柔らかくて、きっととても、とんでもなく良い物に違いない気がしてきて、やはり返そうと次の日バス停に行ってみた。話しかけたが気づいてもらえなかった。男性に少女の姿は見えていなかった。

「人と話せたのがうれしくて失念していたのです。本来、妖の姿が人に見えることは滅多にない。力の強い者やけもの妖には意志でその姿を見せる者もいますが、私のような力の弱いものは、晴れ雨や春のうらら日など天候の悪戯でときどき人に姿をさらしてしまうらしいです」

「あの雨の日は、たった一度の私にとってのそれだったのでしょう」

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その日から雨が降るたびにバス停へ行った。雨の中ではしゃいでいたら、もう一度あの人に見える瞬間があるのではないかと思った。手拭いを返したいのなら置いてくればよかったのだが、雨の中で姿を見ると置いて去ることはできなかった。

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でもあの人の無事がわかっただけで、もう良いのです。この一年、姿を見なかった心の痛みが軽くなりましたと言った。

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夏目は少女にニャンコ先生とここで待っているようにと孫娘を追った。アホがとニャンコ先生。

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まだ私に何か用ですかと言う孫娘に、夏目貴志といいますと名乗った。本当は俺の知り合いがあなたのおじいさんに、とてもお世話になって会いたがっているんだけど、本人はここには来られなくてと言うと、ひょっとして、その方もご病気なの、祖父も入院しているんですと孫娘。入院と聞いて驚いた夏目に、本当に祖父を心配しているんですね。大丈夫、風邪をこじらせただけで近々退院できそうですからと言った。

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お孫さんの話だと、山都第二病院に入院中で、クロサキソウゴさんというらしい。明日、お見舞いに行ってタオルを返そうと夏目は少女に言った。

お見舞いに行ったところで、やはり姿は見えないだろうなと考える夏目。タキのおじいさんが残した妖怪が見える陣を借りてみようか。いやあれも絶対じゃないしタキの心に傷をつけたものだ。人と妖、もともとふれ合わなければ思いを残すこともなかったのに。夏目はニャンコ先生に声をかけたが先生は寝たふりをしていた。

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翌日、病院の前で夏目にタオルを渡す少女。行かないのかと言われると、姿を見たら決心が鈍るし、私のことを思い出してくれたら嬉しくて泣いてしまうからと言った。わかった、行ってくるよと夏目。

人はとても多くの人と出会う。たった一度のふれ合いに胸を焦がす妖と違って出会いも別れもめまぐるしく...

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クロサキソウゴさんの病室を夏目が訪ねると、孫娘から聞きましたと優しい笑顔だった。実は叔母が小さい頃あなたにこれを貸していただいたそうで、借りっぱなしで長いこと気がかりだったらしくてと夏目はタオルを渡した。

雨の日、バス停で小さな女の子にそのタオルを貸したことを覚えていますかと夏目が聞くと、クロサキさんは、よく覚えておりませんが、ご丁寧にありがとうと言った。

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少女が立っていた。やっぱり来てしまったのか。少女は窓際で、ソウゴさんと呼んだ。クロサキさんにやはり少女は見えていなかった。窓の外を見ると、おや雨だと呟いた。

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「ええ、でもきっとすぐ晴れますよ。お元気で」

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バス停で、帰ります、夏目さま、ありがとうと少女。空は晴れ間がのぞいてきた。

翌日、再びクロサキさんの病室を訪ねた夏目は、タオルをお返しした証を一筆だけでもと言った。何でもいいです。叔母に渡す何かが欲しくて、勝手をすみませんと言うと、それもそうですねとクロサキさんは言った。そうだ、これでいいかな。

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ありがとうございますとお礼を言うとバス停へ走る夏目。やれやれとニャンコ先生。渡したいものがあるんだと呼ぶと少女が下りてきた。

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ソウゴさんが返してもらった証としてこれをくれたんだ。君にって。

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わあ、きれい。ありがとう夏目さまと少女。

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「ああ、今日は晴れていて良かった。きれいなタオルが濡れなくて良かった」

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☆次回 「祓い屋からの手紙」

【感想】
いいお話でした。せつないけど優しくて、あったかな気持ちになるね。少女妖怪はすごくカワイイ。呪ったり祟ったりしてくれるらしいがw
ラストは感動的だったね。EDの曲も画像もいいね。寝る前に見てよかったと思った。待っているのは眠いけどw