およそ遠しとされしもの。
下等で奇怪、見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。
それら異形の一群をヒトは古くから畏れを含み、
いつしか総じて『蟲』と呼んだ。



(2014年1月に放送されたものです)

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蟲師 特別篇 日蝕む翳 (ひはむかげ)



かつて寄り添い、いつしか失くした、かけがえのない光。
分かち合ったぬくもり......

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日食まであとひと月。太陽が月の陰に隠れて辺りが薄暗くなると蟲が騒いで普段は蟲が見えない者にも見えたりするとギンコに聞いた化野先生は楽しみにしていてギンコを呼んだが所用があると断られた。

淡幽は日食にまつわる記録を調べていた。多くの蟲が力を増す。そのため蟲気に当てられる者が多い。記録によると、
1.蟲柱の発生 蟲が集まって柱状となるので近くに長居をすると蟲気に当てられることがある。日食が過ぎても柱が散らないときは蟲送りの儀式をする。
2.日光を恐れる者。日食の最中にヤインに付かれたことにより以前とは別人のように日光を恐れる。蟲下しを使う。
3.眠れぬ者。日食の太陽を見過ぎて目を傷め日没後も眩しさが失せず眠れない。シラヤミがもたらす変異で光脈の光か蟲が作り出す光を浴びせ続けると治癒する。
4.消える者。日食の後、蟲が見える体質のものが姿を隠す。蟲と共に山に入り多くは高所で再び姿を現すがヒトの目に映らない姿になることも多い。連れ帰り情をかけることだけが治癒の術だが再び山に入り戻らないことも多い。

主な事例は蟲師たちには馴染の蟲だから今回もさほど混乱はないだろうと淡幽。気がかりなのは「日蝕み(ひはみ)」で現出すれば早めに手をうたないと厄介なことになる。残された記録は少なく現れそうな土地を予測できればいいのだがとたまに話した。

そして日食の日がやってきた。化野先生はギンコに蟲の捕え方を教えろと言ったがギンコは薬を送ってきた。日食メガネを用意して待つ化野。淡幽は一度見てみたいと言ったが大事な御身とたまに言われて地下に入った。皆どうか息災で。日食が始まる。

太陽が欠けていく。曇りで肉眼でも見ることができた。辺りが暗く寒くなった。蟲が見えた子どもが何これと言い出すがムシトリ網を持って待機していた化野先生には見えなかった。お天道さんがいなくなっちゃったと子供たち。

化野先生は言った。直また現れるから大丈夫。でもこの怖さを覚えておきな。お天道さんがなければ自分たちは生きておれないものだということを。再び太陽が現れ始めると暖かい、よかったねと子供たちは言った。

ギンコはとある村で日食を見ていた。太陽が再び姿を現し日食が終わったと思ったら黒い影のようなものが出てまた太陽が欠け出した。蟲が空に上って行き影を大きくしていくのが見える者もいた。辺りはまた暗くなった。ギンコは前日村長をたずねて、このあたりで日食の障りがあるかもと話していた。元に戻すにはみんなの協力が必要だと言った。

あの日を隠す影の中心には日蝕みという蟲がいて他の小さな蟲を寄せ集め増殖されて影を作っている。普段は地の底に身を潜めているが日食のときだけ核と根に分かれて核は上空へ行く。消すには日蝕みがこの地に張っている根を探して日にさらせばいい。とはいえ在処はこの村の付近ということしかわからない。いつもと違うところを手当たりしだい掘ってくれとギンコは村の人たちに言った。

皆で手分けして探すが特に変わりはなく根は見つからなかった。ギンコに淡幽から日食は無事済んだとの文が届く。ほかの日蝕みが現れそうな場所へ向かわせた蟲師からも事無きを得たとの知らせが届いた。そちらはどうだという文にギンコは呟いた。予測、ご命中ですよ。

明日の朝になれば何事もなかったように日が昇るだろうと村人は話したが翌朝も太陽は隠れて暗いままだった。根は見つからず何日も暗いままの生活に苛立ち始める人々。不安になるのはわかるが堪えて地道に探してくれとギンコは言った。畑の作物も枯れ始めた。このままじゃ冬を越せない、おしまいだと人々は言った。

日々の中心にあったもの。なくなるなど考えもしなかったものを失ったとき、人がよりどころとするものは、代わりに中心とすべきものは、いったい何だろう。

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暗い中、雨戸を閉めている家があった。空家ではなさそうだ。少女(ヒヨリ)が出て来た。白い髪、肌、色の薄い目。まだ昼間よとヒナタが止めるがお天道さんが消えているからこれなら私も外に出られると言った。外に出たヒヨリはギンコを見ると同じ病なのかとたずねた。

自分の姿がなぜこうなのかはわからないが日の光は見ても平気だとギンコ。父親がヒヨリにまた痣が出るぞというがヒヨリはヒナタにあの花畑に行こうと言った。畑のものが枯れたから町に何か売りに行かなくてはいけないからダメだとヒナタ。ギンコは父親に話を聞かせてくれないかと言った。

妻がふたりの娘を身ごもって間もない頃に月食を見た。その月は今の日食のように見る間に欠けていって不吉に思えた。月を見ていた妻は倒れ、急に気が遠くなったと言った。やがて妻は無事ふたりの娘を産んだが、ひとりは白い髪と肌に薄い色の目をしていた。妻は産後の肥立ちが悪く間もなく事切れてしまった。

ヒヨリは外に出て日の光を浴びると痣が現れ高熱を出した。そのため日中は家中の雨戸を閉ざし以後ずっとほとんど家の外に出ることもなく奥の座敷で過ごしてきた。

ふたりが見たのはニセの月食だったのだろうとギンコ。日蝕みの亜種の月蝕みの仕業で身重の体でその光を浴びると赤子は色素を失い、生後、日の光を浴びると火傷のような痣になる。ひとりが影響を受けずにすんだのは体内でもうひとりが影になって光をさえぎっていたからだろう。ギンコの話を聞いていたヒナタはヒヨリが私を守ってくれたんだねと言った。

ヒヨリはヒナタと外で遊びたいと泣いたが父は外に出ると死んでしまうかもしれないと言って出してくれなかった。ヒナタは蝶を捕まえてきて部屋に放したり花を摘んできてくれたりした。お外はきれいなものがいっぱいでいいなと言うヒヨリにお花がたくさん咲いている秘密の場所があるとヒナタは話した。

お天道さんが出ていない日なら大丈夫だろうと曇りの日にふたりはお花畑に向かうがヒヨリは途中で眩しいと言い痣が出て具合が悪くなった。ヒヨリは寝込んでしまいヒナタは父に叱られた。父はもうヒヨリが外に出たくなるような話をするのはよせと言った。ヒヨリが余計に辛い思いをするだけだから。

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だいぶ良くなってきたヒヨリはお花畑の花を摘んできてほしいと言ったがヒナタは場所がわからなくなったと答えた。友だちが誘いに来てもヒナタは遊びに行かずにヒヨリと過ごした。ヒヨリといるほうが楽しいからと言うヒナタにヒヨリは嘘つきと言った。

外で遊ぶのが好きだったのに自分だけ外に出られるのが後ろめたいから? 私がかわいそうだから? そんなふうに思われたくないとヒヨリ。じゃあ私はどうしたらとヒナタが言うと、私と代わってよとヒヨリ。できないなら私の前からいなくなってよ。ヒナタがいるだけで私も本当はこうだったのにと思ってしまうとヒヨリは泣いた。

ヒヨリの病を治す方法は見つかっていなかったが、日食を元に戻せれば病を治す糸口も見つかるかもしれない。父はヒヨリにそう話すとひとりにして悪いがしばらくの間こらえてくれと言いヒナタも一緒にギンコの手助けをすることにした。

ひとりで留守番をしていたヒヨリは家の外に出てみたが体は何ともなかった。昼間、外に出るのは何年ぶりだろう。作物は枯れ不安な顔をしている村の人たちを見て、日の光が浴びられないだけであんなに暗い顔をして、私の気持ちが少しはわかってるでしょうね。いい気味だわ、このままずっと日食が続けばいいとヒヨリは思った。

ヒナタが言っていたお花畑へ向かうヒヨリ。山道で息がきれた。このあたりまで来て具合が悪くなりヒナタがおぶってくれて家に帰った。大変だったろうな。ヒヨリは足を滑らせて下に落ちてしまった。気づくとそこはきれいなお花畑だった。光る花が咲いていた。すごい、ヒナタの言ったとおりだ。一緒に見られたらよかったなとヒヨリは思った。

ヒヨリが花を摘んで家に戻る途中にギンコと会った。この時期に咲く花じゃないから日蝕みの根があるせいかもしれない。場所を教えてくれないかとギンコは言ったがヒヨリは嫌よと答えた。このままではさらに影が大きくなって蟲ばかりの不毛の土地が増える。早く手をうたないと手に負えなくなると言うギンコに私にはこのままのほうがいいものとヒヨリは言った。

お前だって他の人と何も変わりはしない。直接日にはあたれなくても憎くても物を食うだろう。日の光によって生かされている。お前はあの蟲にそっくりだなとギンコ。あの日蝕みという蟲は日食のときしか地上に出られず地底に潜んでいる。何のために地表に現れるのか、蟲の中には生涯闇に潜んで光を必要としないものもいる。

日蝕みが地表に現れるのは日の光を必要としているからで地底にのみいては生きていけないものなのではないか。だが根の部分は光を浴びると消えてしまう。だから核の部分は蟲を集めて影を作り根を守りながら日の光を浴びている。お前も似たようなものだろう。だからこの薄明りの世界が幸せに思えた。だがこのままお前が戸を閉ざした座敷に居続ける限り、今にこの薄明りも闇に閉ざされるぞ。

自分が影響を受けなかったのはヒヨリが影を作って守ってくれたから。私なんかいなければよかったのにね。ヒナタのまわりに蟲が集まって来た。蟲と共に行くヒナタ。姿が消えた。家に戻らないヒナタを探しに行く。日食の影響なら蟲の見える者にしか見えなくなっているかもしれない。蟲が見えるんだろうとギンコはヒヨリに言ったが、知らない、すぐ帰って来るわよとヒヨリは言った。

3日が経ったがヒナタは見つからなかった。いなくなってなんて本気で言ったんじゃなかったのに。ヒナタもヒヨリを探した。お天道さんはいつでもちゃんと昇ってきてくれるのが当たり前だと思っていた。いったいどうしたらいいのかと話す村の人たち。そうだヒナタは絶対どこにも行かないと思っていたからあんなこと言ってしまったんだとヒヨリは思った。

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私にとってヒナタはお天道さんの代わりだった。なのに、ごめんねヒナタ戻って来て。ヒヨリはお花畑でヒナタを見つけた。ヒナタはヒトの目には見えない姿になっていた。どうしたら元に戻れるのかとヒヨリはギンコにたずねた。まずは日蝕みを絶つこと。そうすれば蟲が散り影響も薄くなる。後はずっとそばにいて根気よく話しかけることだとギンコは言った。

ヒヨリはギンコをお花畑に案内した。花の下を掘り返すと日蝕みの根があった。これを日のあたる土地まで持ち出せばいい。皆で根を樽に詰め荷車に乗せて日があたっている丘まで運ぶ。影が追って来たが力を合わせて影を抜けた。蓋を取ると日蝕みは空に上って消えお天道さんの影が散った。光が戻った。

日が戻ったぞ、これでまたやっていけるとヒヨリに告げる父。外から日が差し込んでいたがヒヨリは眩しくなかった。外に出てみた。日の光を浴びても何ともなかった。日蝕みが作り出す波長は通常は心身に障る光だが月蝕みの影響を受けた者には効用があったということかもしれないとギンコは言った。

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じゃあこれはもう必要ないなとギンコは日蝕みの核のかけらを出した。これ自体は生命を活性化させる強い力を持つ。使い方によってはヒトにもいい作用をもたらすと聞いてヒナタにあげていいかとヒヨリ。ヒナタは首を横に振った。いらないのと聞くとヒナタは頷いた。

そこまでこちらの言葉に反応しているのなら元に戻るのは時間の問題だからそれまでしっかりそばについているようにというギンコの言葉にヒヨリは頷いた。わかってる、今度は私がヒナタを照らす番だ。じゃこいつはどうするかな。ギンコは化野をたずねた。

思惑は外れたと化野先生。蟲は見えず普通に日食が始まってあっという間に終わった。これといって何事も起りはしないという化野にギンコはそれは何より、何事もないのが一番だと言った。日食が終わった後に多少患者が増えた。薬をやったがいまひとつだと化野先生。送った文を読んでないだろうそれは蟲が原因だから一緒に送った薬で治るとギンコが言うと化野先生は慌てて出かけて行った。

日食の間に何をしていたか聞きたいから待っていろと化野先生。ギンコはもう行くよと言った。このあと、その話をしに行かにゃならんところがあるんでな。

ギンコから無事終息したと文が届いたとたまが淡幽に知らせる。見せたいものがあるので近々こちらに報告に来るそうですとたま。近々か、あいつの言うことはあまりあてにはならんからな、気長に待つとするかと淡幽は言った。

昼寝をしていて少し寝すぎたギンコ。いい天気だ。今日も何事もなく進めりゃいいが。また歩き出した。