およそ遠しとされしもの。
下等で奇怪、見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。
それら異形の一群をヒトは古くから畏れを含み、
いつしか総じて蟲と呼んだ。



★2014年4月より放送の「蟲師 続章」→ 蟲師 続章 あらすじまとめ

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蟲師 第24話 篝野行 (かがりのこう)


(2006年に放送されたものです)

火を焚け、夜が来る。火を灯せ、闇が来る。
火を隠せ、骸から生まれし火が紛れ込む。


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新種の蟲が出たと聞いて調査に来たギンコ。見たことがない草がいっぱい生えてきて山の木をどんどん枯らしているんだと話す子どもたち。この里の蟲師をたずねると野萩(やはぎ)という娘だった。あいにくですがもう調査は終えたんですよと野萩は言った。

ギンコは野萩の研究の写しをいくつか読んだことがあって名を覚えていたが若い娘だったことに驚く。あの蟲の調書を見せてもらえないかと言うとさっきは終えたと言っていた野萩は途中までですがと調書を出した。明日、山ごとすべて焼き払うからもう調査の必要はないと野萩。他に方法はないのかとギンコは言うが時間切れだと野萩は言った。何か力になれるかもしれないから、これまでのことを話してくれとギンコは言った。

二か月前、原を拓いて畑にするために皆で土をおこしていると大きな黒い岩が現れた。このあたりは火山に近いため溶岩石も多くいつものように掘り起こして原の隅に放っておいた。翌日その岩の亀裂から草が生えていたがその時は気にもとめなかった。3日後に降り続いた雨が上がって原に行くと拓いたばかりの土地一面にその草が生い茂っていた。

それはどれだけ刈っても抜いてもすぐにまた生えてきた。異形のものだと気づいた時にはもう遅く草は花のようなものから毒を吐き周囲の草木を枯らし始めた。勢いは衰えを知らず数々の駆除法を試したが有効なものは見つからないまま草は山じゅうに広がり里に迫って来た。

山ごと焼くのは代償がでかすぎるとギンコ。しかも正体不明の蟲だからどんな影響が出るかもわからない。どうにかして人を集めて確実に抜いていくべきだとギンコは言った。このまま作物が枯れれば里は冬を越せなくなる。皆の命がかかっているのよと野萩。だからこそ焦って手を出すのはまずい。賭けるなら自分らの命だけにしろとギンコは言った。

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調書は差し上げますからお引き取りくださいと野萩。木を切り倒している人たちにギンコはやめるようにと言ったがよそ者に何がわかると言われた。よそ者から見ればあんたらは怯えた猿の群れ、恐怖でまわりを見失って闇雲に攻撃を加えていると言うとジャマするなと殴られ納屋に閉じ込められた。

夜、人々は山を焼き払うために登って行く。嫌な予感がしたギンコは後を追う。あれは溶岩石の中にいたもの。火を与えてはいけない。そんな気がする。山にはすでに火が放たれていた。あの草はすべて燃えていた。これでやっていけると人々が話していると焼けた草の中から音が聞こえた。

そこから出てきたのはカゲビだった。野萩は早く里に戻ってあの火を家に近づけないようにと言ったがカゲビを吸い込んでしまった。ギンコは里の家に行きそこらの入れ物を全部伏せるようにと言った。その人の言う通りにしてと野萩。あれはカゲビといって雨や寒い日に現れて火と思って近づいた人の体温を徐々に奪っていき気づかずに長くあたると凍え死ぬこともあるから気をつけるように、火にあたってぬるいと感じたらカゲビと思うようにと人々に話した。

カゲビの中にはヒダネという蟲がいて人の熱を吸って生きる。気をつけてさえいれば害を受けることはないから大丈夫と野萩。あの草がヒダネの幼生だったとは面倒なことになったなとギンコが言うとヒダネなら対処はできると言った。カゲビはしつこい。もし手におえなくなったら文をよこしてくれ、ひとりで無理はするなよと言うとギンコは里を後にした。

草は絶つことができたがカゲビを家に入れてしまった人たちは体温を奪われていて野萩も草を吐いた。力を貸してほしいと野萩に呼ばれたギンコが再びたずねたときには7人亡くなっていた。カゲビで煮炊きしたものを食べて腑を痛めたものも大勢いたが今は落ち着いている。蟲を殺せば火も消えるのは書物通りだったが書物にない生態もわかったと野萩。十分に熱を吸い続け寿命をまっとうした骸からはまたあの草が芽を出すのよと言った。

力を貸してほしいというのはそのことかとギンコが聞くと、それはひとりでできると野萩。山を焼いた時にカゲビを吸い込んでしまった。ずっと体が凍えるようだったが止まった。その代わり草を吐くようになった。これは報いなのでしょうね。ヒダネが私の腑の中で芽を出して毒を吐きはじめた。里のみんなにも私がもう長くないことは伝えた。体を乗っ取られる前に里を出て死に場所を探すからあなたに里を頼みたいと言った。

断るとギンコ。あんたらが始めた戦いはこの先も続く。あんたひとりで終わってもらっては困る。考えていたことがあるからひとつ試させてくれとギンコ。カゲビを捕まえて持ち帰り竈に入れた。どういうつもりと聞くこの火は所詮ニセの火、幼生にニセの火を与えても成体にはなれないだろう。あの草を駆除するにはカゲビで焼けばいいんじゃないかと言った。

そしてカゲビを通した食べ物にもおそらく同様の効果がある。野萩がそれを口にすると吐いた草は焼けていた。もっとちょうだいと言う野萩に焦るなよとギンコ。急ぐとあんたの体がもたないから、ゆっくり治していくんだ。少しずつ確実になと言った。

その後も、草を吐き、腑を焼き、
里を異形のモノから守りながら娘は生きているという。


★原作では第5巻にあります。