「pupa」とは未知のウイルスの名前。厳しい家庭環境の中で寄り添いながら生きる兄・現(うつつ)と妹・夢(ゆめ)だが、ある日、赤い蝶を見た妹はpupaウイルスに感染、怪物に羽化してしまう。兄は妹を助けるため、ある決断をする。

★注意:残虐表現あり

pupa (ピューパ) 第2話 「噬螫」(ぜいせき)



     pupa2-1

二人の父はよく母を殴った。母は黙ってそれに耐えていた。母に飽きると子供たちを殴った。「これがおまえの現実なんだよ」と父は二人を弄んだ。ただ時が過ぎるのを待った。両親が離婚し母は若い男と遊ぶように。誰も帰らなくなった家で妹は寂しいと泣いていた。

     pupa2-3

現の前に猫を抱いた女性が現れ、こんなに食い散らかして、これは片づけるのが大変ねと言う(公園にいた人々は見るも無残な姿で倒れていた)

「ちょっといいかしら。あの化け物のことでお話が」

女は研究者で、マリアと名乗った。死体はこちらで何とかするから心配ないと言った。何なんだと言う現に、気の毒だけど妹のことは忘れてもらうしかないと言う。

大切な妹なんだと現。なら説得してみるかとマリア。はたして、あなたのことがわかるか、お兄ちゃんの声は妹さんに届くのか? と言った。

     pupa2-2

怪物と化した夢は、

「人をころして、おいしくて、おいしくて......どうしよう、こんなとこ、お兄ちゃんに見られたら」

夢のもとに現。来ないでと夢。人間をたべたが、まだ足りないのと涙を流す夢。

「大丈夫だ。夢は大事な妹なんだ。どんな姿でも夢は夢だよ。さあ、一緒に帰ろう」

「お兄ちゃん、うれしい。お兄ちゃん」

次の瞬間、怪物は現の肩口に噛みついていた。