まず、この記事を書く前に知っておいて欲しい知識なのだがポケモンのブラック・ホワイトに登場するナツミというキャラクターがいる。
彼は太った山男というような風体であり、ゲーム上の役割としては完全なモブでいわゆる「ちょっとホモっぽい言動をしてプレイヤーの笑いを誘う」というLGBTの常識が進んだ今となっては差別表現だと言われかねないようなキャラクターである。
詳しくは「ポケモン ナツミ」で検索してみてほしい。
詳しく知りたい人は上のリンクを踏んでほしい。
ホモネタが嫌いな人は閲覧注意である。
そして、ポケットモンスタースペシャル、通称ポケスペであるが・・・
まあ、有名なのでざっくりと説明するがポケモンのコミカライズである。
そして彼が登場した。
彼は、原作ゲームのホモという部分は一切省かれている。
正直、ホモを出すなとは言わないが原作のゲームの同性愛をギャグにするような描写は褒められたものではなかったのでこれはいい改変だろう。
しかし、この「キャラ」はそういうことでは収まらないくらい良キャラとして登場した。
このナツミは最初は主人公のブラックにポケモンバトルを挑んでくる。
そして、ブラックは彼を年齢と貫録から相当の実力者だと思っている・・・
が・・・
弱い。
そしてこのナツミは20年トレーナーをやっているが一度もリーグに出場できたことがない、と言う。
しかし、彼の未進化の手持ちや実力を見るとリーグに出場できない、どころではなく・・・
相当弱いトレーナーであることがわかる。
いわゆる才能のないダメな中年男性という印象を受ける。
もっとひどく言えばいわゆる負け組というやつである。
正直、リーグ出場という夢を背負って故郷を旅だったブラックも本音は「こうはなりたくねぇな」と思ったに違いない。
ブラック自身、まだこのころは才能があるかどうかはわからず、下手すればこのナツミがブラックの未来の姿である可能性もゼロではないのだ。
夢を背負って旅立ってすぐにこんな人に遭遇してしまうのはちょっと縁起が悪いとすら思っただろう。
まあ、それはそれとして・・・
いろいろな作品がある。
大抵は才能のある(あるいはダメだと思っているが才能があるか、ないけど最後には結局ある程度成功する)主人公しかいない。
そしてそれはたいてい若者であり、
さらに脇役にも
・才能があるかないけどまだ将来性のある若者キャラ
か
・才能はあってかつて成功した大人のキャラ(今は主人公を指導したり落ち込んだりする主人公を励ます役)
しか大抵は出てこない。
・才能もなく弱いまま中年になってしまったキャラ
というのは基本的に出てこない。
だが、ポケスペは出した。
これは結構珍しいことではないかと思う。
そして世の中にはこういう人がかなりの数多いのではないかと思う。
かなりの数いるのにもかかわらず数々の作品はこういう人をいないかのように扱うのである。
そしてナツミは語る。
もう引退しようと宣言するナツミ。
そのナツミを「諦めるな、まだポケモンたちはリーグに出たがっているかもしれない」と励ます。
これは珍しいパターンである。
大抵は諦めたり落ち込んだりする若者を大人が励まそうとするのだが
ここでは大人を若者が励ますという珍しいパターンが成立している。
そして、いろいろあってナツミのモンメンというポケモンはナツミのために強くなる特訓をしていたことが明らかとなり
ナツミはポケモンリーグ出場を決意する。
というお話である。
原作ではいわゆる「気持ち悪いおじさん」でしかなかったナツミをここまで味わい深いキャラクターにするというポケスペの作者の力量がわかる話である。
俺は正直ポケスペという漫画にあんまりいい印象を持っておらず、ポケモンの世界観を台無しにする漫画という印象すらあった。
だが、この話を読んで印象が変わった。
ここまでいい話がかけるのなら俺も別の話は読んでみようと思います。