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鉄の箱がある。

私はその中身を、試行錯誤の上「りんごである」と推定した。

しかしまだ実際に中身は見る事が出来ない。


キーン


聞きなれない音が裏側から聞こえた。

見てみると鉄の箱に穴があいていて、

その人はりんごを頬張っていた。

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箱の中身はりんごだった。

私の推測に間違いはなかった。

しかし私はりんごを食べられなかった。


まぁ、いいじゃないか。

りんごが好きな奴はいっぱいいる。

だからこそ狙った奴も多かったんだ。

一歩抜きん出た奴が中身を食べた、それだけだ。

しかし、腹が減ったな。


さて、次の「鉄の箱」がある。

私は試行錯誤の上、中身は「いちじくである」と特定できている。

いちじくは見た目上、嫌いな人が結構いる。ねらい目だ。出身地の特産品でもある。是非とも食したい。

あとは箱をどうにか開けるだけだ。

地味な作業になるが、釘しか持っていないのでひたすら一箇所を削る他ない。

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5割ほど削った頃であろうか。

ふと、りんごの事を思い出し、手が止まる。

「私がここのいちじくを食べる事によって、この箱の中身は無くなる。」

「私の箱の反対側で、ずっと前から四苦八苦している人がいたら?」


キーーン

反対側から音が聞こえた。

少し、なんだ、安堵を覚えた。

しかし、腹が減ったな。


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次の「鉄の箱」も、中身は特定できている。結構好きだが、さほど好物でもない。

しかし作業は同様、途方もない積み重ねだ。


やはり考えてしまう、


「無理してまでその中身を得る必要はあるのだろうか。」

「見知らぬ他人を蹴落としてまで座る椅子の価値は?」



脳は「鉄の箱の中身がいちじくである」という「正解が得られればそれでいい。


しかし、


体は「りんご」や「いちじく」を食べなければ朽ちてしまう。


とりあえず、手を休めてはいけない。

そういう「法則」の上に生かされている。



大。