今年3月8日の「国際女性デー」に合わせてセクハラ防止などを訴えようとした中国の女性活動家5人が、直前に各地で一斉に拘束された。穏健な活動に対する公安当局の強硬姿勢は、習近平(シーチンピン)指導部の市民運動に対する警戒感の表れと受け止められ、国際社会からも非難の声が高まっている。

 拘束されたのは鄭楚然さん、王曼さんら20~30代の女性5人。男女の権利平等を求め、北京、浙江省杭州、広東省広州を拠点に活動してきた。弁護士や支援者によると、3人が13日に釈放されたとの情報がある。

 5人は当初、故意に騒動を引き起こす「騒動挑発」容疑で身柄を拘束されたが、のちに「公共の秩序を乱した」という容疑に切り替わっていた。

 女性たちは「セクハラをなくして、みんな安全に」「セクハラを捕まえろ、走れ警察」といったスローガンを書いたステッカーを公共交通機関の乗客に配ることを計画していたが、3月6~7日に連行された。

 中国では近年、性別による不平等をただす運動やジェンダー問題への主張が若い世代を中心に広がっている。拘束された女性らは、人材募集の際に「男性のみ」とした企業を告発する手紙を送る活動や、性的少数者LGBTの権利を守る取り組みを続けてきた。

 中心となってきた鄭さんは2年前、朝日新聞の取材に「誰かが声を上げなければ、政府も動き出すきっかけがつかめない。私たちと政府はウィンウィンの関係だ」と述べていた。

 こうした活動は反体制を掲げていないが、当局は拘束に踏み切った。市民運動が社会の安定をおびやかす大きなうねりを呼ぶことを警戒しているとみられる。

 中国当局の手法には、国際社会からも強い反発の声が上がっている。米国や欧州連合(EU)は早期釈放を求め、韓国などの中国大使館前では市民団体による抗議活動も起きている。

 米国のケリー国務長官は10日、「世界中で女性たちを苦しめているセクシュアルハラスメントや多くの不当な行為に対し、誰もが声を上げる権利がある。我々はこうした困難な課題を進展させようとする努力を強く支持する。中国当局も活動家らを黙らせるのではなく、支持すべきだと確信する」との声明を発表。ヒラリー・クリントン前国務長官も自身のツイッターで「中国の女性活動家たちの拘束をやめるべきだ。許せないことだ」と批判した。

 各国からの非難に対し、中国政府は「どの国の誰であろうが、中国に釈放を要求する権利はない」「中国は法治国家だ。米国側には中国の司法の主権を尊重し、中国の内政に干渉しないよう促す」(外務省報道官)としていた。