食品などのCMや包装でよく見る「モンドセレクション受賞」の文言。売り文句にする商品が多いが、これってそもそもどんな賞?
 昨年末、全国紙にきらびやかな全面広告が載った。
 〈お寿司で世界初。〉
 回転ずしチェーン「無添くら寿司」が、熟成中トロや厚切りサーモンなどを使い、年に何度か期間限定で売り出す「豪華セット」。2014年度モンドセレクション金賞を受賞した。くらコーポレーション(堺市)によると、初の出品で受賞したという。
 モンドセレクション(本部・ブリュッセル)の広報担当者によると、同賞はベルギー政府主導で1961年にできた独立系国際機関。酒、食品、飲料、ダイエット・健康製品、化粧品、ワインの6分野で世界各国の商品を評価し、品質に応じて表彰する。消費者に安心して購入してもらうため、が目的だ。例年、80カ国以上から3千を超える商品が応募し、14年度も3163品が参加。400品が最高金賞に輝いた。
 審査は、日本人も含む各国のシェフや栄養コンサルタントら約70人による「製品から完全に独立した専門家」が行う。総合的な食品コンテストとして長い歴史を誇り、「食のオリンピック」と呼ばれることも。
 日本ではサントリーのビール「プレミアムモルツ」が05~07年に連続で最高金賞を受賞。CMでも流れ一気に知名度があがった。
 審査料として約1200ユーロ(約17万円)かかる。そのせいかネットでは「お金を払って出品すれば、ほぼ受賞出来る」などと揶揄(やゆ)される面も。ある食品研究家は「審査基準や結果内容などが公式に発表されておらず不透明だ」と指摘する。
 実際、どうなのか。日本で同賞の公認エージェントとしてエントリーの申請代行を請け負う「ライセンスジャパン」の渡部与志美ゼネラルマネジャーによると、14年度の受賞はヨーロッパが125社に対し、アジアは808社。韓国、中国、台湾も増えているが、全体の7割が日本からだ。「モルツ」の受賞後、エントリーする企業が増えたという。料理評論家の山本益博さん(66)は「国内にも総理大臣賞などがあるのに見向きされない。外国に評価されると弱い、そんな日本人の気質がよく表れている」とつれない。
 渡部さんは「モンドはミシュランと違い、出品しなければ受賞出来ない。審査費用が発生するためにそのような風評があるのでは。ただ毎年どのメダルも受賞できない商品もたくさんあり、お金を払えば受賞できるということは一切ない」と話す。日本企業が多いのは「日本では同じ商品を多くの企業が作るので、差別化のために著名なブランドを使いたいのでは」と推測する。
 審査が不透明という指摘についてモンド広報は「参加企業の機密を尊重するため、私たちの方針で結果は公開しない」と答えた。
 発売60年を迎えるにあたり10年にエントリーした長崎県佐世保市の「九十九島せんぺい」。14年度まで5年連続最高金賞を受賞した。営業担当者は「結果の内容は教えて頂いてはいませんが、栄誉ある賞なのでホームページ上でも大きくアピールさせてもらっている。長年のお客様からもお祝いを頂いています」。15年度にも応募したという。
 今年発売50年の「源氏パイ」(三立製菓、浜松市)は早くからモンドに注目。69~86年度に金賞7回、最高金賞1回を受賞した。「主力の商品で一通り賞を頂けたので」と、近年はエントリーしていないという。15年度の審査に向けたサンプルの受け付けは今月、締め切られる。