かなり以前のこと、ある会合で芸大の油絵科を卒業して、個展を開いたことがあるという男性と話をしてた時に、絵を描いてる芸能人の話題になりました。私ともう一人の女性が「誰の絵は評価できるか?」と問うたところ「ビートたけしと石坂浩二はなかなかだけど、それ以外は・・・」という返事でした。城戸真亜子というタレントがいて、彼女は美大出身なんですが「あの絵があんな値段で売れるとはね」と冷笑気味。そして「工藤静香は死んでほしい」と言い放ってました。断っておくと、その男性は温厚な性格で、無闇に他人を誹謗中傷するような人物ではありません(言うまでもないですが、これはあのような作品を発表している工藤静香を批判しているのであって、本人に対する好悪とは無関係の評価です)。ともあれアーティストは芸術には厳しいですからね。
 そこからクリスチャン・ラッセンとヒロ・ヤマガタの話になり、彼はヒロ・ヤマガタはそれなりに評価しているようでした。私自身も「クリスチャン・ラッセンはねえ・・・」という感じです(笑)。あのイルカの絵は、スイミング・クラブの通路なんかに飾るにはいいかもしれませんが。永野が持ちネタの「ゴッホより普通に、ラッセンが好き!」というギャグをラッセンの前で演ったら、ラッセンは感激して涙ぐんでいたそうですww。ご本人には日本語の皮肉なニュアンスが伝わってなかったんでしょうけどね。
 誰しも表現欲はあるでしょうから、芸能人が絵を描いて展覧会を開くのは自由だけれど、それが売れたからといって、自分に才能があると勘違いしないでほしいです。その道のプロからすれば、素人芸の恥曝しであることがしばしばですから。もっと言うと、本職(タレント活動)がプロのレベルに達してるか?と感じるような芸能人の芸術家気取りには軽蔑しかありません。そう言えば、華道家の假屋崎省吾はクラシック・ピアノの CD を出してるんですよね。そんな彼は、素人がレベルの低い自称華道展を開催しても、文句はつけられないと思います。
 芸能人で小説を書いてる人もいますよね。私はタレントの書いた小説は読みません。一生の間に読める本は限られてますから、素人が書いた拙いであろう(読んでないので評価はできません)作品に、お金と時間と労力を費やす気になれないからです。又吉直樹の『火花』だけは読みましたけどね。一定水準に達した作品ではありました。でも又吉が芥川賞を獲れたのは、今が出版不況だからだと思います。まあ、芥川賞は今では権威になっていますが、元々が販促のために創設された賞ですから、話題性のある人に賞を上げるのは当然かもしれませんが。
 今の時代でも、各界の権威というものは、ないようで、やはりあるんです。だから権威筋は、業界を潤すために一定水準をクリアした門外漢の作品には賞を与える一方、有名人の余技の素人作品は、バカにする必要もない程、バカにしてるのかもしれませんね。「買うのは見る目のないファンだけ。時が経てばただのゴミ」という風にね。
 有名人の方はといえば、後世に残る作品を創ろうなんて意思はなく、今売れればいいのかも。というより、ただただ己の表現欲を満たしたいだけなのかもしれませんね。でもそれを発表できたり、買ってくれる人がいるのは有名人だからであって、実力ではありません。
 芸術の評価には絶対はありません。究極的には好き嫌いなんです(笑)。ただし芸術にも伎倆というものは存在していて、最低ラインをクリアしてない作品が世に出るのはいかがなものか、と思います(こんなものが活字になるのか!?と思う文章を書いてるプロの作家もいるんですけどね)。