岩田『臣さん‥‥ちょっと‥カードキー‥‥取って貰って良いっすか?』




広臣『どこ?』


岩田『財布の中の赤いライン入ったやつッス』



あったあった‥‥


財布を取ろうとしたら
こいつの華奢な足が目に入った



靴‥‥脱がせとくか。


岩田『臣さん?‥‥』


広臣『あぁ‥‥わかってるって。』



でかい荷物にこいつのヒールを持った俺と

女を背負ったガンチャン。


怪しすぎるわ。



ピーーーーー



カチャ‥‥



広臣『何?この部屋‥‥めっちゃ良いじゃん。』



さすが金持ちの息子。

俺もそこそこ良いとこの息子だけど‥‥



岩田『先月まで人住んでたんで‥‥』


広臣『とりあえず寝せるか』



岩田『はい。』



ベッドルームに入る。


家具は備え付けられてて
必要な物は揃ってる



今すぐでも住めるな‥





岩田『‥‥軽いっすね‥‥』



そう言いながら
優しくベッドに下ろすと

乱れたシャツを戻す



広臣『あんま触んな。』



思わず出た言葉に
自分でも驚く


岩田『‥‥臣さんのじゃないのに?』



広臣『‥‥』




岩田『心配しないで下さい。酔った女と自分に気のない女襲うほど‥‥俺チャラくないですから。』


広臣『わかってるよ』




静に寝室のドアを閉める。



ガンチャンは
冷蔵庫に水とお茶を入れると

冷蔵庫やテレビのコンセントを入れる


気の利く男‥‥。




広臣『俺‥‥帰るわ』


岩田『俺も‥‥出ます』





こんな不安な気持ち‥‥

初めてだ。



岩田『お疲れ様でした。』


広臣『‥‥おつかれ~』





家に帰りたくない。


がんちゃんのマンションを出ると


俺は自宅と反対方向の


リナの家に向かった。






むしゃくしゃしてた。






ピンポーン


リナ『え??』


広臣『俺。開けて。』



リナ『‥‥。』



ガチャ



リナ『もう来ないかと思ってた‥‥』



広臣『ん‥‥』



リビングまで行くと
ソファーに座る



リナ『飲んでたの?』



広臣『水‥ちょうだい‥』



リナ『‥‥』



もう寝る前だったんだろう

リナはナイトウェア姿で俺を迎えた。


水をテーブルに置くと

心配そうに俺を見つめる。


広臣『‥‥飲ませてよ。』



リナ『‥‥』



俺の言う事はなんでも聞く





呼べば彼氏とデート中でも
俺の所に来る女




リナ『久しぶりに来たとおもったら‥‥』


広臣『‥‥何?』


リナ『私じゃどうにも出来ない事もあるよ?』


広臣『‥‥うるせぇ。』


リナ『きゃ‥‥』


腕をつかんで寝室のドアを開ける。


リナ『ちょ‥‥臣くん!!』



広臣『いいから脱げ。』


ベットに座り込むリナ


俺はティーシャツを脱ぎ捨てると

リナのナイトウェアを
脱がせる。


リナ『‥‥臣くん‥。』


そんな目で見るな。


俺は部屋の照明を全て落とすと



リナの俺を哀れむ視線からも
逃げた。


何もかも
忘れたかった。




思い出したあいつの温もりからも

逃げたかった。




リナ『‥‥臣‥‥くんっ//』




広臣『ひろおみ‥‥』



リナ『‥‥ひろ‥‥おみ。』



何も考えたくない



あいつの声じゃない
リナの声






こんな行為に何の意味があるんだ。




リナ『‥‥はぁ‥‥もぅ‥‥やめっ‥‥//』


やめてと言いながら

体は俺を求めるリナ





今日1日

あいつに支配された俺の思考



解放されたい。







ただただ

欲望に身を任せた。





だけど


誰も


何も


救われない。





広臣『‥‥‥‥』



わかってる




リナ『ね‥‥やめよ‥‥?』



広臣『‥‥ごめん‥‥』



その理由は

思い出したから‥‥



自分の一部のように思えた女は

あいつだけだった事を












今更
気づいたなんて。


広臣『‥‥』


リナ『‥‥帰って‥‥。』




リナのナイトウェアを渡す



リナ『もう‥‥来ないで‥‥』


広臣『リナ‥‥』



リナ『早くっ‥‥っ』


広臣『‥‥‥』


リナ『引き止めたくなるから‥‥さっさと帰ってよっ‥‥っ』


俺の胸を押すリナの細い腕は

少し震えていた。




広臣『ごめんな‥‥』



リナ『‥私のこと‥‥少しでも‥‥好きだった?』




広臣『‥‥ごめん‥‥』



リナの事

好きだとか‥‥考えた事もなかった



広臣『でもお前、彼氏いんじゃん。』


リナ『わかってないね。
女はね
心と体と‥‥どっちも欲しいの。
好きでもない人とは手だって繋ぎたくないの。』


広臣『‥‥』

リナ『私ね。彼氏なんていないの。』


え?



リナ『私に彼氏がいなかったら‥‥
臣くん相手にしなかったでしょ。
私だって、普通の女。
重たい女なの。』





思い出した


『ひろおみの心が欲しい』


そう言っていたあいつを







気持ちが通じてないセックスが
こんなに無意味な事だと



思い知らされた夜だった。





あいつにも

リナと同じ思いをさせてたんだ。




これは

俺が受けるべき罰なのか


まだ遊びたいとか
縛られたくないとか




そんな事を言いながら


必要とされていると勘違いしていた。





帰り際



リナが言った



『いい加減‥‥ちゃんと恋愛しなよ。』


『‥‥』



東京の夜は明るい。



光の消えない夜を

長い間過ごしすぎて



ほんとの夜を忘れてしまった。







広臣『ちゃんと恋愛‥‥ね。』




した事‥‥ねぇわ。



一気に虚しくなった。





これが現実。

これが‥‥今の俺だ。



夜風に吹かれるタバコの煙を
眺めながら




ひとつ

心に決めた。





その夜は

久々によく寝た。


片付けられた室内は
良い香りがしてて


嫌いだった一人の夜も

まんざらでもなく感じた。


次の日も


その次の日も


せわしなく過ぎていく。



がんちゃんとあいつがどうなってるのか


気になるけど







一カ月後に迫ったコンテストに

集中しようと決めた。






変わりたい‥‥



そう思ってから

一切の女遊びをやめた。



目の前の事から
ひとつづつ



自信を手にするまで。