‥‥

‥‥

あれ?

ここ‥‥

周りを見渡す‥‥

ライブ‥‥会場??

割れるような歓声

ステージには7人の姿

私は大勢のスタッフの中の一人

花道でステージを見守る。

「え?‥‥あれ?‥‥あっ!!」

ちょうど目の前を、トロッコが通る

あっ‥‥乗ってるのは臣。

パチ‥‥

目があった。

「‥‥//」

小さく手をふる。

ぷいっ

‥あれ?

おみ?

気づいたよね?

私‥‥って。。

あ‥‥そっか‥‥

私‥‥変な夢見てたんだ‥‥。

臣と仲良くなって一緒に住んじゃう夢。

ステージから落ちて怪我して‥‥

臣が来てくれて‥‥

やだ‥‥夢と現実ごちゃ混ぜに
なってた。

‥‥

‥‥

あんなに‥‥優しく私の事見てくれてたのにな‥‥

さっきの冷たい目‥‥

だけど‥‥

これが現実‥‥

どんなに手を伸ばしても届かない。


臣の視界に0.1秒でも映ったってだけで

泣いて喜ぶ。

それくらい遠い。

遠い遠い存在。


ステージでは

臣のバラード

優しい歌声に

目を閉じる。

大好きな声‥

全部‥‥

夢だったんだ‥‥。


ゆっくり瞬きをすると

頰に涙がツーーっと流れる



「‥‥ぃっ!」


「‥‥お‥‥みぃ‥‥。」

臣「おいって!大丈夫?!目ぇ開けろって!」

ん?

目を開けると‥‥

「‥‥っ!おっ‥‥おみ!!」

「‥‥なんだよ。声でけぇし‥変な夢でもみた?」

「‥‥」

ポタポタ‥‥

「‥‥へ?今度は泣いてるし!」


「‥‥おみぃ‥‥」

ぎゅっと抱きつくと

ヨシヨシって頭を撫でてくれる。

「なに?夢??」

「‥‥ん‥‥臣が‥臣がねっ‥」


‥‥

臣だった‥‥夢。




臣「俺が?」

そう‥‥臣と‥‥私がね‥‥

すっごく遠い夢。



「‥‥何でもない。」

手に入らないと思ってた

わたしには大きすぎる幸せが

今‥現実にわたしの目の前に居る。

「‥‥忘れちゃった‥‥。」

心配そうに覗き込む

臣「‥‥何でもないって‥‥そういやぁ‥‥ちょっとそこみてみ。」

「なに??」

臣「いいから‥‥」

シーツをめくる。

臣に手を引かれ‥‥ベットから出ようと

って‥‥

「ん?‥キャーーー!!」

は‥‥裸だった。。

「ちょっとまって!!」

‥‥わざと

わざとだな。。

クスクス笑いながら
自分だけバスローブなんか着ちゃって‥‥

シーツをたぐり寄せて体に巻く

「どぅ?これもドレスみたいでしょ?」

「うん‥‥着ても着なくてもいいよ。」

「‥‥//」

着なくても?

ま‥‥いっか。。

ほらほらって後ろから抱きしめられて
窓際まで‥‥

カーテンを一気に開ける

シャッーーーー

「‥‥凄い‥‥」

「な?」

「臣は‥‥見慣れてる?」

臣「んー。見慣れてる‥っちゃ‥‥ー見慣れてる。。」

目の前には東京の夜景

見下ろすと
まるで

壮大なイルミネーション。

私を後ろからぎゅっと抱きしめると

首に軽くキス

モゾモゾと居心地のいい場所を
探しながら

少しかすれた眠そうな声で

私に話しかける。







お前実家どこだっけ?

ん?すごい田舎だよ。

小さい頃何になりたかった?

ケーキ屋さん

でかくなってからは?


え?‥‥なんか現実見ちゃって
ケーキ屋さんになる夢なくなっちゃった。

臣みたいに‥‥夢追いかけてなかったよ‥‥。





へぇ‥‥俺に会う前何してたの?



臣に会う前?

わかんない‥‥何してたっけ?





本当‥‥何してたんだろ。

臣を見つけてからは‥‥
急に毎日が楽しくてたまらなくて‥
ライブ会場とかでバイトしてたよ。

夢‥‥探してたよ。







臣は?



ん?俺?







俺は‥‥




お前の事探してたんだと思う。





‥‥///



‥‥//


‥‥//


「‥‥‥‥おい。なんか言えよ。」




「へ?‥‥あのさ‥‥恥ずかしくないの?!」




臣「は?!あーー言わない。もーー言わない。2度と言わないから!」


今どんな顔してるのか気になって
少しだけ体を反転する。

臣「‥‥なんだよ。」

「ふふっ‥‥耳‥赤ぇぞ!」


臣「マネすんなし!」

臣の腕から逃げ出す!

「臣!捕まえて!」

臣「はぁ?!まだ酔ってんの?!」

「いいから!」

まるでロミオとジュリエットの
有名なあのシーン。

捕まって引き寄せられて

ふたりで笑いあう。

かけられた魔法が解けるのを
拒むように

深夜2時

重なり合うふたつの影は

何度も何度もひとつになる。







。。。



翌朝


昼からの打ち合わせに間に合うようにホテルを出る

もう始まってる単独ライブ

ここはこうした方がいいとか
内容変更したり
いろいろな調整が行われる

臣「あ‥‥今回のステージ構成ってお前のアイデアって?」


「へ?‥‥あ‥うん。」



臣「へぇ~」



「どう思うって‥聞かれたからファン目線でイロイロ話したの。興味あって‥‥。昔ね、ちょっとだけそういう仕事したことあったのヒロサン知ってたみたいで。‥‥」

臣「そうなんだ‥‥」



「あ‥あのね臣‥

 来週からのライブ‥‥私行けなくなっ 
        たの。」







臣「‥‥なんで?」




「頼まれた仕事があって同じ日‥私も出張なの。」


臣「ふぅーん。。どんくらい?」


「‥‥3週間?」




臣「えっ?長っ!」


「ね‥‥」



手が届かないと思ってたものに

手が届いてしまった私。

離したくなくなってしまうその前に

離れられなくなってしまうその前に

慣れと欲

たまたまそれを手にした私は

それに踊らされてしまう。













それなりの良い人生を今まで歩んできた臣

私のようにたまたまではない。

三代目になることは運命だった。

はたから見ると羨ましいほどの
人を引きつける魅力に溢れる彼も

夢が叶ってしまった
欲しいものが手に入ってしまったと

その先のまだ見ぬ世界に
自分を見失いそうになりながら
必死でもがいている。

もっと上に

もっと上に

そこに登らなければ見えない何か

そこから見える景色はどんなだろう

一体どんな自分なんだろう

そこまで辿り着いてからでも

手に入らない物がきっとあって‥

彼も同じで‥‥

慣れと欲と戦っている。

どうするのが正解か
どう動くのが正解か

わからない

運命なんてわからない

誰にも。

信じてないと

叶えられない。








出発当日
























臣より早く家を出る。


私の部屋に入る事のない臣は
荷物が片づけられてる事にも気づいてない。




「行ってくるね。」




「あ‥待って。」



私の靴を見る

そのまましゃがみ込む。





「もう一人で結べるよ?」





臣「ダメ。俺が結ぶ。」




私も臣と同じ目線にしゃがみ込む




「あんまり‥きつく結ばないでね。」




臣「きつくしねぇとほどけんだろ。」




「‥うん。」




キス‥‥したい。




「臣‥‥キスしたい。」




臣の胸元に手を当てて少し背伸びを
すると、私に合わせてしゃがんでくれる。

チュッ

離れたと思ったら

今度は臣からも‥‥

チュッ




「い‥行くね‥。臣も‥‥行ってらっしゃい!」




臣「ん。」


「?」




臣「はい」


両手を広げておいでってしてる。

「なに?」





臣「充電‥‥」




私をぎゅっと強く抱きしめる。

「昨日いっぱいしたよ?」


臣「したけど‥‥足りねぇんだもん‥‥」



「‥‥」

もうこれ以上は無理だと
私の心が悲鳴を上げる

臣「よしっ!」

大きく背中を撫でて
おでこにキス




「じゃあな‥‥行ってらっしゃい。」




「うん‥‥臣も‥‥ライブ頑張ってね!」



精一杯の笑顔で

大きく手を振って

部屋を出た。






扉の閉まる音がしない



きっと振り向けば
また臣の胸に戻ってしまいそうで

私はそのまま臣に背を向けたまま
エレベーターに乗る



傷は浅いうちが治りも早い

私の心に刻まれた
臣との生活

もうだいぶ手遅れ。

耐えられそうになかった
すべてを告げて

臣の前から姿を消す

そんな事‥できなかった。

臣を傷つける
臣が悲しむ

それを目の当たりにする事から

逃げた。

本当は違うのも分かってる。

私が居ても居なくても

臣ならきっと生きていける。

臣が居ない

それを受け入れる事が出来ないのは

本当は私だ。

これから世界に活動を広げていくのに

今の私が傍に居ることは
誰の幸せにも繋がらない。

こんな何も出来ないような女だったら

臣を支える事なんて出来ない。

私に足りない強さと自信

きっと彼は優しいから

それでもいいと‥‥
それでも傍にいてほしいと言うだろう。

だけど

私の小さなプライドが

それを許さなかった。

いつか

あなたを守れるくらい
強い心を持ったとき

また再び
私と臣の運命の歯車が
動き出す事を

願う事しか出来ない。

それをお互いが求めていればの
話だけど‥‥。






下で待つ車

涙で視界を歪めながら

車に乗り込んだ。





ごめん‥‥おみ‥‥。






「出して下さい。」





ヒロサン「いいの?」





「臣には‥頃合いを見て私は辞めたと‥‥伝えて下さい。」





ヒロサン「言わなかったんだ。」




「福岡に出張だと‥‥伝えました。」






ヒロサン「本当に‥‥それでいいんだね?」




「‥‥はい。」




ヒロサン「まぁ‥‥始めからそういう契約だったしね。」






「‥‥私‥‥あなたの事すごく嫌いでした。今も大嫌いです。」





ヒロサン「‥‥」





私とヒロサンを乗せた車は

成田空港に向かった。

しばらくは

日本に戻る予定はない。