臣とはあれから一定の距離を保ったまま

特に変化はなし‥‥


少しだけ仲良くなった事くらい。





仕事のハードな日もあれば


半日休みの日もある。



だけどほとんど休みはなくて


夜にメンバーとご飯に行ったり


他のグループのメンバーと

集まったりの送り迎え以外



私の出番もない。




ケンチャン隆二クンとのご飯の時‥‥

1度だけ一緒に行く?って言われた事があったんだけど‥‥。



臣「ケンチャンが呼べって言ってたけど。」



「え‥‥」



臣「何回か来たの?病院‥‥」





「ケンチャンが?」


臣「仲良さそうだし、」


「‥‥あの後に1回来てくれたかな‥‥」




臣「ふぅーん。‥‥で‥どーすんの?」



「あ‥やめとく‥」



臣が気にしてくれた事が少しだけ
うれしくって‥ケンチャンが何度も
来てくれた事は隠してしまった。。


みんなは私達が同じ部屋にすんでる事を
知らない。


必要以上にメンバーと仲良くする事も避けたくて断った‥‥。



ケンチャンにも連絡してないしね‥‥。



会社で会うと声をかけてくれるケンチャン。

本当よく周りが見えてる。。
気づかいができて
場を和ませる天才だと思う。





次の日の仕事終わり

臣「今日さ‥‥先家戻っててよ。」

楽屋の前で待ってた私に
小さな声で話かけた。

「‥‥ん?どっかいくの?」

臣「‥‥うん。」

 「じゃあ送‥‥」

 臣「いいって。」

「‥‥」

臣「今日は‥‥いい。」

「でも‥」

臣「ちゃんと‥帰ってくっから‥」

「どこにいくの?」


臣「‥‥気になる?」



「‥‥」




気になるよ‥‥

臣が誰と会うとか‥
気になるに決まってるのに。

壁にもたれて
スマホをいじりながら

ニヤッと笑う臣は

やっぱり心臓に悪い。




だけど‥‥仕事だもん。

それが私の仕事‥‥なんだもん。




臣「なんて顔してんの‥‥タカヒロさんに‥‥呼ばれたから。飲みに行くだけだよ。何時になるかわかんねぇし‥‥」


「‥‥ほんと?」


臣「嘘かもね。」




「信じるよ。」




臣「嘘かもしんねぇのに?」




「タカヒロさんと飲みに行くんでしょ。臣がそう言うなら信じるよ。」



臣「‥‥そ?ちゃんと帰ってくっから‥」




そう言って臣を会社に残して私は先に戻った。




誰に会うとか
何をするとか

彼女でもない私に

臣は話してくれるけど

あのマンションの話だけは

今も何も話してくれない。

私も

恐くて聞けない。

臣にとって私は
そんな存在なんだろう。

ただの個人マネージャー。

そんな事を考えて
ため息ばかりの夜を過ごす。

眠れなくて起きてた私‥

タカヒロ君と飲みに行った臣は

どんなに待っても

朝方まで

帰って来ることはなかった。





ピンポーーン


タクシーの運転手がインターホンをならす

慌てて迎えに行くと

後部座席で眠る臣。



起こしても起こしても起きない。

一体どんだけ飲んだの?



臣「ん‥‥わりぃ‥‥」


「歩ける?」



臣「ん‥」



ふらつく臣の腕を私は自分の首に回して
部屋まで支えた。



「今日仕事夕方からだから‥」



臣「‥ん」


フワッ‥‥


甘い香り‥



「‥‥‥」 



臣を部屋まで運ぶ

掃除は自分でするからって
わたしは臣の部屋には入ったことなかった

「部屋‥‥入るからね。」


ガチャ‥‥


「ほら‥‥ベッドまで歩いて‥‥」



----ドサッ




ベットに仰向けに寝せる。



「水‥‥飲む?」



「‥‥はぁ‥‥飲む‥‥」



つらそうに軽く握った手を

オデコに当ててる。


冷蔵庫からミネラルウォーター
を出して持って行った。


「はい‥‥」

臣「‥‥ん‥」


私はベッドの端に座り

つらそうに起き上がる臣の背中をそっと
支える

腕を取って水を持たせる


「ぷっ‥臣?‥‥ひどい顔‥‥」



ちらっと私を見ると

俯いて頭をくしゃくしゃっとした。


臣「ねぇ‥‥少しだけ‥‥」


「ん?」




臣「‥我慢して‥」

そう言いながら

臣の両腕が

私の脇を通って背中に回る。



ぎゅっ‥‥





まるで母親に甘える子供のように

私の胸に顔を埋めた







「‥臣?」



臣は何も言わない






大きな背中に触れて



しばらく優しくさすっていると



すーすーっと

規則正しいリズムの呼吸になった。


そっとベットに臣を寝せる。



いつものかっこつけた臣じゃなくて

髪の毛はボサボサだし

少しだけお髭も伸びて‥‥


そんな姿も愛おしく感じる。

だけど‥‥

私は気づいてしまった。

「タカヒロくん‥‥こんな甘い香水
つけないよ‥‥

気づきたくなかった。



きっと理由があるはず。


話してくれるよね。




わたしは

あなたの言葉だけを信じるよ。






すっかり朝になってて
昨日からろくに寝てない私は
リビングのソファーで眠ってしまった。


お昼過ぎ


慌ただしくケータイがなる。


ピロリロピロリロ‥‥
ピロリロピロリロ‥




ヒロサンだ。


どうしたんだろう‥‥


「‥はい‥もしもし」


ヒロサン「そこに登坂はいるか?」



「え?‥‥あ、はい。」 


ヒロサン「すぐに事務所に来てくれ。」

「え?」

ヒロサン「撮られたんだよ。」



「とられた?って‥」



ヒロサン「他の事務所の売り出し中の女優との写真だよ。あれほど言っておいたのに、君は何をしてたんだ!」



「‥すいません。」




すぐに臣を起こす。




ヒロサンが呼んでる。



その一言で二日酔いの体は
一気に目覚める。



「大丈夫?」

臣「なにが?」



この様子じゃ
昨日のことも

覚えてないんだろう。



時間はない。

車の中で話の内容を伝える。

 

「写真撮られたって」



臣「え?」



「昨日!‥‥写真撮られたって。」



臣「だから何の写真?」




「知らないよ!!」




思わず声が大きくなる。



臣「‥‥」


「女の人も一緒だったの?」


臣「え?」

「昨日だよ。それともタカヒロ君と飲んだのも嘘なの?」



臣「嘘じゃねぇし‥‥」




駐車場で急いで車から下りようとする私




臣「ちょっと待ってって!」


強く腕を引かれ

あっと言う間に

臣の腕の中に閉じ込められる。



「ちょっ‥‥臣!?まだ酔ってるの?!//」



離れようと押してみる。

鍛えられた身体は

びくともしない。



臣「ちゃんと聞いて‥‥。」



臣は私を閉じこめたまま
話を続けた。


昨日あったこと‥‥
大まかに‥‥だけど丁寧に
私に説明してくれた。

臣「信じてくれる?」



「臣が‥伝えてくれることは信じるよ。」



臣「‥‥よかった‥‥」


「あの‥‥」


臣「ん?」


「そろそろ‥‥離してくれない?//」



臣「え?‥あっ‥‥わりぃ‥」



まるで恋人同士のケンカの仲直り。

なんて思ってるのは
私だけ‥




きっと‥‥臣には
なんてことない事だろう‥‥

私を抱きしめる事なんて。


そう思うのには
ちゃんと訳があって‥‥


私‥わかっちゃうんだよね。。

繋いだ手とか‥

抱きしめられた時とかに‥‥

相手の感情とか気持ちが。











当たり前だけど
  

臣が私に触れるその手からも

何も伝わっては来ないの‥。







彼の気持ちが
少しでも私に向いて欲しいとか

思わずにはいられないけど

そんな事‥‥思っちゃいけないんだと

自分の気持ちに

きつく‥きつく蓋をした。







事務所に入ると

ヒロサンは少しだけ怒っていて‥‥


私と臣は恐る恐るソファーに腰を下ろす。

ヒロサン「登坂‥‥これは君だね」

見せられた写真。
ご丁寧に拡大した物まで‥‥

臣「はい。俺です。」

ヒロサン「君は‥‥何も言わなくていい。



「あのっ!これは違うんです。ヒロサン。話を聞いて下さい!」



ヒロサン「これはいい宣伝になるんだよ。今回これが撮られなくても‥出るはずだったスキャンダルだしね。」




「え?‥宣伝って‥‥

 でも、事実はちがいま‥」






臣「いいから!」


なんで?

ほんとはタカヒロ君のお気に入りの女優さんでっ!付き合ってるんでしょ?

臣は飲みすぎだその人をタクシーに乗せようと介抱してただけなんでしょう?!

すぐ傍にタカヒロ君だって写ってるはずだって‥。

出るはずだったスキャンダルって‥

何のこと?

訴えるようにヒロサンを見ると



ヒロサン「なにか‥言いたい事があるなら‥聞くよ。」



そう言ってゆっくりと座った。

臣から聞いた事をヒロサンに伝えた。

しばらく考えたヒロサンの発した一言で
私は言葉を失った。



ヒロサン事実はそうかもしれないが。
この写真はそのまま記事にしてもらう。
登坂の記事でな。



臣「‥‥」


ヒロサン「事務所のコメントもいつも通りだ。いいな。登坂‥君は、何も言わなくていい。」

決定事項だ。

仕事に戻れ。










深くお辞儀をして立ち上がる臣





なにいってんの?

冗談じゃない‥‥

何も言わずに帰るなんて出来なかった‥‥

私のファン歴なめんなよ!


「ヒロサン‥‥あなたファンを何だと思ってるんですか?話題作りに、嘘の記事で注目させて事務所のコメントはプライベートな事は本人に任せてますで誰が納得するんですか?
何万人のファンの心をかき乱して何もコメントせずに心理作戦とでも言いたいんですか?離れて行ってもまた戻ってくるみたいな‥そんなふるいにかけるような考えなんですか?!
ファンの気持ちに誠実にいて下さい!


そのまま‥タカヒロさんの記事でいいんじゃないですか。恋愛しちゃいけないなんて、誰も思ってないです。誠実に一人の人を想えるって素敵な事です。応援出来るファンの方が圧倒的に多いはずです。
こういうときの事務所の対応‥‥ファンは見てます。ファンじゃなくても見てます!事務所の対応と本人の誠意が伝われば‥‥スキャンダルもスキャンダルじゃなくなるはずです。



ヒロサン「‥‥」

「‥愛とか夢とか伝えるって言いながら‥‥ファンの心‥‥踏みにじるような事しないでください。」


ヒロサンはしばらく黙って
重い口を開いた



ヒロサン「相手の事務所がね‥‥まともなら‥‥君の考えも‥‥通るのかもしれないけどね。」



なるほど

大人の事情

お金の事情

会社の事情


私にはさっぱり理解できない‥‥

ヒロサン「登坂‥仕事に戻れ。彼女ともう少し話がしたい。」


私だけを残して臣は仕事に戻った。

心配そうに私を見つめたその瞳には
不安な感情が溢れていた。






ヒロサン「キミは‥‥今回のスキャンダルがホントに登坂のスキャンダルでも‥同じように言えたかな? 」


「それは‥‥わかりません。」


ヒロサン「俺は間違ってないと思うんだ。これが‥‥こうしなければ‥‥この世界では生きてはいけない。」

「私の言ってる事は‥きれい事だと‥」

ヒロサン「そうだ。」



ヒロサン
時に私達は辛い決断をしなければいけない時がある。
タカヒロと登坂‥他のアーティストもそうだ。
 俺は自分の子供だと思ってる。

人生をかけてるんだ。
 

 お互いに。 

 君には‥‥わからないかな。

ファンの応援あってこその俺たちだ。

それはもちろんわかってるんだよ。

だけどね、

会社という家を守る為に
子供達をスターにするために‥
心理的な効果は必要なんだよ。


そう言って

TP

トップシークレットの印鑑の押された
書類を私の前に置いた。


これから1年‥‥2年先まで

どんな経緯でアーティスト達が
階段を駆け上がるか‥‥
注目させるための手段が書かれていた。


ヒロサン「もちろん人間だからね‥‥ほとんどうまくいかないよ?途中で予定変更なんてしょっちゅうだよ。辞めていく子だっているしね。」

「臣のスキャンダルは‥‥元々出る予定だったんですか?」

ヒロサン「あぁ、そうだ。」



事務所同士の話もついてたけどね‥‥
予定変更だ。


そう言うとヒロサンは

私に1枚の封筒を渡した。


ヒロサン「それが元々記事になる予定だった写真だ。」

もう必要ないから
君にあげるよ



中にどんな写真が入ってるのか‥‥

何も考える事ができなくなって

震える手で封筒を開く



ゆっくりと引き抜く





あ‥‥



あのマンションの赤いレンガ‥‥

特徴のあるマンション



ここまでで

私はまた‥封筒に写真を戻した。

見たくなかった。

どんな写真かもわからないけど

どうしても



見ることはできなかった。





これが彼の住む世界なんだと

彼がこういう人なんだと



たった一ヶ月ちょっと一緒にいたからって

少しだけ心を開いてくれた用な気になってたけど‥



ここに来て


わからなくなった。

人気アーティストとただのファンから

何も‥‥



変わってなかった‥‥