退院まであと2日


3週間で増えた荷物を少し整理する



「おぅ!元気しとったか?」

「あっ!ケンチャン!」

椅子を引いて座ったケンチャン

おおきな背伸びをひとつ‥‥

健二郎「んぉーーーーーー!」

「お疲れさま。」

疲れてるよね。

ツアーで全国を回って‥

ケンチャンはドラマの収録も詰まってるって言ってたもんね。

「ねぇ!すっごい面白かったって‥‥
ここ書いてあるよ!

あたしはライブ途中までしか見れてないし

記憶も曖昧で‥‥

だからファンの人のブログや
インスタを最近よく見てたの

ケンチャン「ん?そやろ?健二郎君最高やって書いてあるんやろ?誰よりも輝いてましたとか!」

「ぷっ‥‥うんうん!‥‥ねぇけんちゃん?」

健二郎「ん?‥‥どないしたん?」

「あたしがスタンドから落ちた時って‥‥」

健二郎「ん?福岡公演やんな?それが?‥‥」


「ないの‥‥そういう記事‥‥Twitterとかにも‥‥」

健二郎「‥‥そやな。」

「臣が‥‥救急車まで運んでくれたんだよね?見てる人だって沢山居たはずなんだけど‥‥別に良いけど、なんか不思議じゃない?」


健二郎「‥‥‥不思議やな。けど最初はあったんちゃう?次の日には埋もれてしまうやん?」


んー。
そうなのかな?

あの日

私が転落して
救急車まで臣が運んでくれて

ライブは続行してて
臣はすぐステージに戻ったって


少し前に隆二クンに聞いたんだけど‥‥


ライブが中断になってないなら
よかったってホッとした。

ちょっとしたトラブルって事になってる
って言ってたな‥‥







「ねぇ、けんちゃん。。臣がね‥コレ持ってきてくれたの‥‥」

引き出しから
フリスビーを出す

「けんちゃんもおかしいって思う?
こんな物っておもう?



健二郎「思わへんよ?俺やってめっちゃ好きなアーティストおるし!その人からもらったタオルとかボールペンとか‥‥他の人から見たらゴミみたいなもんでも‥‥俺からしたら宝モンや!家宝や。」


「‥うん。」

健二郎「別にわかってもらえんでもええねん。自分が大事にしとるもんとか‥‥大事な人とかは自分が決めることやろ?」


「そうだよね。。」



健二郎「実際会って話してみんとわからんやろ?その人間がどんな人かなんて。

臣ちゃんはな‥‥

イメージとか噂で人を判断する事は絶対せんのんよ。そやからされるのも嫌うねん。

結局‥‥
臣ちゃん自身も

本当の登坂広臣を
見て欲しいんちゃう?」

「そうだね‥」


健二郎「少し前の臣ちゃんが惚れた女も‥初めからそのつもりじゃなかったとおもうわ。どっかで‥なんか壊れたんやろと思う。。臣ちゃんも自分を出すと離れてくって‥おもっとんのや。」


「‥そんな事‥‥ないのにね。」




健二郎「臣ちゃんはそのフリスビー大事なもんってわかっとるで?ただな‥‥今は、そういう感情になるって事がわからんだけや。」



健二郎「いろんな事に情熱的にならんのが
あいつの長所であり
短所でもあるんや

愛とか夢とか‥‥

ファンに伝えようとしとるけど

自分にも言い聞かせようと

必死なんが

なんか見とって痛々しい時もあんねん。

不器用なやつや。

けどな?

表に出さんだけで

人一倍優しいし

努力しとる。

魅力的な男や。



って‥‥

俺が言わんでも

わかってんやろ?」


「‥‥‥‥ぅん。わかってる‥‥」




健二郎「なんで泣くん?」

「わかんない‥‥」

健二郎「苦しいんか?」

「うん‥‥苦しいょ‥‥」

健二郎「泣いたらええよ。
 我慢せんで‥
    ただな?
その涙、拭けんのは‥‥
俺やないんが‥‥

けんちゃんは苦しいわ。」

自分の事をけんちゃんって呼んだ事が
少しおかしくて
笑ってしまう。

「ぷっ‥‥」

健二郎「泣いたり笑ろたり‥‥忙しいな‥‥女は。」

「けんちゃん最高や。」

「あたりまえや!」

ありがとう‥けんちゃん。

健二郎「ほな‥‥ソロソロ帰るわ。
退院して落ち着いたら‥‥
隆二とがんちゃんも誘って飲みいこか?


そう言ってけんちゃんは
テーブルの上のメモ用紙に
ラインのIDを書いてくれた。



「ありがとう。ほなコレ‥‥
 Twitterにあげとくわ!」




健二郎「なんでやねん!ヘタクソか!」



顔をくしゃっとして
豪快に笑いながら

「またな!」

と手を振ってけんちゃんは帰っていった。


けんちゃんが書いてくれたID‥‥

きっとけんちゃんはわかってる

あたしから

連絡することはないって

「ありがとね‥‥」


手帳に挟んだソレは
私の宝物として
大事にとっておくね。




退院前日

最後の診察

先生「はい、予定通り‥‥明日退院です。」

「ありがとうございます。」

先生は一通りレントゲンを見ながら
説明をしてくれた。

まだ走れないけど
毎朝のリハビリは
きちんとする事

1度伸びた靭帯は
また伸びやすい為

激しい運動は
控える事

2カ月後にまた診察に来る事

「わかりました、あの‥‥」

入院費の事‥‥

すぐには払えないって伝えなきゃ‥‥

「あの‥‥入院費の事なんですけど‥‥」

先生「はい。」

「私‥‥ちょっと事情がありまして
退院の時に支払いが‥‥できそうに‥

先生「ん?‥‥もう‥‥精算されてますよ?」


「?」


どういう事か‥‥

先生の口から

ポロポロと

おかしな事が聞こえてくる。

「あの‥そんなはずはないですけど。」

先生「いえ?間違いないですよ?」

「え?‥一体‥‥誰が‥‥」

先生「五十嵐さんて方が‥‥お支払いされてますよ?」

五十嵐‥‥


ヒロサンだ。

先生「そしたら明日午前中に退院ね。
おだいじに‥‥

先生の話も半分聞こえない

どういうこと?

なんでヒロサンが?

どうしょう‥‥

こんな大金‥‥

どうしたらいいの‥‥

ヒロサン‥‥



一体‥‥

何をかんがえてるの?