入院2週間目

残り1週間。







どうしょう。。

えっと‥‥全部で入院が3週間‥‥

となると‥‥

病院代‥‥

いったいいくらになるんだろう。




 


中学に上がる時に母親を亡くしてて
父親に育てらたんだけど‥

父親は

今は遠くに住んでるし

あまり連絡もとってないから
  迷惑はかけられない。






「はぁぁ、、、」

こうなると‥‥
必然的に仕事をすぐ始めないと‥‥

いや‥探さないと‥‥。

仕事‥‥

ヒロサンが置いてった名刺‥‥





引き出しを開けて
手に取る





裏に書かれたケータイとアドレス‥




いや‥‥ないない。




むりむり‥‥






「あぁぁぁぁーーーーーー。」

バフッ

ベットに倒れ込む。




引き出しの奥にまた戻された名刺。






私‥‥悩んでるの?










今日で入院2週間目‥‥




騒々しかった初めの1週間

 

今週は穏やかだった。





けんちゃんや隆二君
がんちゃん

仕事の合間にちょくちょく顔を出してくれた。

必要な物は頼んだら
けんちゃんが持って来てくれたし。




閉鎖的な病院だけど

外に連れ出してくれたり‥‥





もうなんてお礼言っていいかわかんない‥







お礼とか言わんとってや。
好きでしとる事やし。
俺らも癒やされにきてん。

お礼いぅんは‥‥こっちや。










あたしなんかが‥‥
こんな言葉もらうなんて‥‥






癒やされてるのは
あたしだよ‥‥。



いつも元気もらってるし。。

頑張んなきゃね!

ギブスも取れたし‥‥










後1週間!


暇さえあればリハビリしなきゃ‥‥





移動は車椅子から杖になった。

お風呂は今週から自分で入ってるけど
なかなか大変。

どうしても頭だけは毎日洗いたい!

ってわがまま言って
いつも決まった看護婦さんに特別に洗ってもらってたんだけど‥‥

ナースステーションに来たら‥‥
今日からしばらく休みって‥‥

家族の不幸で離れた実家に
帰ってるみたい‥‥。



 


仕方ない‥‥

病院のシャンプー台‥‥




できそう‥?





一人でやってみるか‥‥



洗面台に頭から突っ込んでみる‥‥



シャーーー




髪を濡らしてっ‥‥と


えっと‥‥シャンプー‥‥



どこ置いたっけ‥‥この辺に
置いた‥‥かな?




手を伸ばして手探り。





「つっ‥いった‥」





足が‥‥やっぱり痛むな‥‥




「はい。」




「あっ‥ありがとうございます!」




シャンプーを手渡してくれた。



ん?

誰?

男の人の声‥‥

看護士さん?





「洗おっか?」





「え?あ‥‥いえ!大丈夫‥‥です!」






ジャー‥ボタボタ‥‥







「全然大丈夫じゃねぇけど‥‥」





病院のパジャマ‥‥袖から
襟から‥‥濡れてしまった‥‥





「ちょっ‥‥すいません。タオル‥‥取ってもらっていいですか?1回やり直しますから。パジャマってもう1枚借りていいです?」






シャワーで濡れて目が見えなくて
伸ばせるだけ腕を伸ばして
タオルを受けとろうとする。




ん?





私に近づいてきた
その男の人




「いいから‥‥」



バサッ‥‥



そう言って頭にタオルを被せた。




ゴシゴシ

ゴシゴシ

グイッ

首元も
背中までタオルを入れて拭いてくれた。





‥‥





何だろ‥‥




この香り‥‥




私‥‥この人を





知ってる?







「あ‥‥ありがとうございま‥‥」




目に入った男の人の足元‥‥



ゆっくりとタオルの隙間から





上を見上げる‥‥



「洗ってやるよ‥‥ほら‥‥」





「おっ‥‥臣?!」




ガタッ!

「おわっ!あぶねぇ。ちゃんと立ってろ。」




思わずふらついた私を



簡単に腕ひとつで起こす。




「あ‥ありがとう‥‥」






なにしに来たんだろ‥‥

なんで来たんだろ‥



そんな事聞く間もなく‥‥




彼の誘導でシャンプー台に寝かされた。








臣「待ってろ。」



 

は?





え?







まさかの放置?!




臣「なに。タオル貰ってくるだけ」





臣は腕まくりをしながら




シャンプー室を出て行った‥‥




そっかそっか




タオルか‥‥

って





えぇぇーーーーー!!

  

パニックになる。






どーしょう!

え?洗ってやるよ?





洗ってやるよ?




わたしの?



髪を?




洗ってやるよ?




ちょっ‥‥

心の準備がっ‥‥






「‥‥おい。。落ち着け。」





「ぎゃっ!いつからいるの?」




臣「お前が悶えはじめた時からいるけど?」





「もっ‥‥悶えてなんかないもん!」





「はぁ‥‥うるさい。。ちょっと黙ってろ。」





そう言ってシャンプー台のクッションに頭をグイッと押し付けた。






バチッ

‥‥//

‥‥

こんな角度で‥‥

目が合うとか‥‥








フィッと目を逸らす臣。




バサッ



「目ぇ閉じんだろ‥‥普通。」





わたしの顔にタオルを掛けた。




シャーーー



ゴシゴシ


バシャバシャ



ゴシゴシ


バシャバシャ

ゴシゴシ

ワシャワシャ







 




シャーーー

キュッ







臣「はい、おしまい。」




「‥」



臣「おい‥‥」






やばい‥‥

寝てた‥‥。





「‥‥ほぇぇ‥‥//」





「‥‥後で請求すっからな。」




「え?‥‥料金発生するの?!いい‥‥
いくらですか?




臣「‥‥冗談だけどな。」




「‥。」




臣「ドライヤー」




「え??」




臣「借りてきた。」



シャンプー台に座らせて


後ろから髪を乾かしてくれる。







フワフワ暖かくて

優しい手つきに




また





眠く‥‥なって。






臣「寝たら置いて帰るわ。」





「ねっ‥寝ません‥‥。」

 






ブォーー


幸せな時間は

すぐに終わる





「あ‥ありがとう。。わぁ‥‥サラサラ!嬉しぃ!」





「ん。」




さすが‥
元美容師。










杖をついて立ち上がろうとした。



臣「床濡れてるから滑るなよ。」


ツルッ!



「きゃっ‥‥」







臣「お前‥‥バカ?」




「‥‥はい。ごめんなさい。」





臣「荷物貸せ。」

濡れたタオルとお風呂セットを

持ってくれた。






ナースステーションでパジャマを借りて

部屋に戻る。







臣は

文句をいいながら

私の少し後ろを歩く。






やっぱり

この男は

ズルイ。












部屋に戻る


臣「先‥‥着替えたら?」

 

「あ‥うん。」

臣「手伝おっか?」




「え?‥‥///」



臣「冗談だよ。」





「‥‥あ‥当たりまえだよ//」

 

シャーーー





悔しい‥‥。




すっかり臣のペースだ。





そもそもなんで
臣が来たのか‥‥





けど‥‥なんで来たの?とか

聞いたら

確実にキレられる!




「よし‥‥」




脱いだパジャマをベットの下の籠にいれる。





シャーーー




「お待たせしました。」





臣「待ってねぇけどな。」





「‥‥。」







スマホ片手に椅子に座ってる。





「‥あの‥」






「ん?」





「花‥‥ありがとう。」




臣「‥‥。はぁ‥‥誰?隆二?」






「もぅ枯れちゃったけど。私も好きなの‥‥金木犀‥。」






言うなよっていったのに‥。





って‥




呟く臣。





そして

会話もなく‥‥




しばらく

2人でスマホとにらめっこ。









ガタン‥。

臣「帰るわ。」




臣「冷蔵庫にけんちゃんから預かったもん入れてっから。後でどーにかして。」





「あ‥うん。」




臣「あと‥コレ。ヒロサンから。
退院するときの服だって。




「え?」




臣「貰っとけば?」

臣「じやっ‥」



  


「‥臣!」








臣「‥なに?」







「ありがとう‥」



  

臣「‥‥」






‥‥







「‥‥行っちゃった‥‥」










もっと

言いたい事も

聞きたい事も

たくさんあったのに。





ありがとうとごめんしか
言ってないや。





また

来てくれるの?








部屋に残る彼の
微かな香水の香り








はぁ‥‥

臣が置いて行った紙袋に
目をやる。






ヒロサンからって‥‥





有名ブランドのロゴ‥‥

こんな高価な物‥いいのかなぁ‥‥。

なんか悪いなぁ‥‥





なんて思いながら

やっぱり気になる

大好きな洋服。




中から出てきたのは

靴まで揃った一式






可愛い‥‥




すっごい可愛い‥





靴‥‥

23.5

「なんで‥‥」





中の服だって

フリーサイズではあるけど

全てあたしにピッタリ‥‥






てゆうか‥‥ヒロサン‥‥

こんなの選ぶ?






あっ!

お礼‥‥言わなきゃだよね。

電話‥‥

明日お礼の電話かけよ‥。




ん?

臣の座ってた椅子‥‥

その横に重そうな紙袋




「え‥‥何コレ‥‥」



決して綺麗な文字では
ないけど

たくさんの雑誌
の上に置かれた1枚のメモ用紙

 

お見舞い!




の4文字‥‥

   
 
臣の字‥‥だ。



ぷっ‥‥臣のびっくりマーク‥‥

やっぱり少し変‥。




中の雑誌なんてさ‥‥




「‥‥臣が表紙の雑誌ばっかり‥」




本当‥何考えてるのかわからない。



器用なんだか
不器用なんだか。




完全オフモードの登坂広臣を
知らない私‥





知ってるつもりで
何も知らない

今の臣の事なんてさっぱりわからない。






あんなに好きで

夢中で追いかけてた

アーティスト登坂広臣



そのすべてを知りたくて

必死で情報集めてた。




私が最近知った登坂広臣は


それを仕事の顔だと言ったけど‥‥






思えないよ。




だってどっちも臣でしょ?





知らなくてもいい事を
知ってしまった私



少し怖いけど




私はあなたの事を 





もっと知りたい。