大阪から帰京してちょうど1カ月。
今週末には大阪市で大阪都構想に関する住民投票が実施されます。
大阪以外、東京でもあまり報道はされず、また人々もさほどの関心を示していない様子です。
橋下徹といういわばトリックスターの提案していることに対する賛否を問うものくらいの認識かもしれません。しかしながら、おそらく大阪市の人々の多くは自らの今後を占う最大関心事としてとらえているはずで、賛成・反対双方にとってシリアスな課題であることは間違いないところでしょう。
3年前に初めて大阪市に住む機会に恵まれ、橋下徹という人が単なるトリックスターではない事象には数々出会いました。確かに、自らの考えをぶち上げ、空気を作って周囲をなぎ倒しながら前進していくイメージがあるのでしょうが、法律家であることから権限と責任という観念がきわめて強く、そして役所という組織をいかにマネージして成果につなげるかということを考え抜いているという点で、個人事業主の典型である既存の政治家とは一線を画するものがあります。
また、既成の権益を徹底的に見直し、限られた資源の最適配分を進めてきたという点でもこれまでの大阪を大きく変えつつあると言えましょう。
例えば、大阪のメインストリートである御堂筋の両側は長きに亘って「50mの高さ規制」が施されてきました。若干のセットバックを施すことで60m程度のビルを建てることはできるのですが、いずれにしてもそれが限度でした。界隈のビルオーナーが10数年以上市に規制緩和の要望を出しても一向に進まない岩盤規制でしたが、橋下市政になってこれが一気に進んで、50mの線を保ちつつも100m以上のビルが建てられるよう昨年4月に規制緩和されています。
予算のスクラップ&ビルドによって教育に多くの予算配分をしたことは広く知られることです。御堂筋の高さ規制緩和よりも大事な改革もかなり進んでいますが決して派手ではないことも多いのです。文楽への補助金削減はずいぶん騒がれましたが、おかげで文楽劇場は活況を呈していて補助金の削減を免れています。新たなファンの開拓も進んでいると感じます。
で、都構想です。
東京人の感覚では理解できないことではありますが、大阪府よりも大阪市が格上という感覚が大阪市(議会・役所)にはあるようです。京大出の学生や阪大出の学生が大阪市役所に就職する、同じように市会議員にもエリート意識があり「大阪府何するものぞ」の気概が、つまり「大阪府をリードし繁栄を支えてきたのは大阪市であり優秀な我々なのだ」という自負が二重行政を生み、税金の浪費を生んだとも言えると思います。「現体制のままでも二重行政の解消は可能」という都構想反対派の言い分を百歩譲って認めたとしても、それには「松井・橋下体制が半永久的に続く」ことが条件になるでしょう(もっとも近時「二重行政は存在しない」と言うようになっていますので何をかいわんですが)。
役人にせよ議員にせよ大阪市の仕事を生業にしている人にとって、都構想実現の後「京大出の自分が区役所職員!!」「京大での自分が区会議員!!」ということでプライドをずたずたにされることはたまらない屈辱でしょう。特に議員は当選しなければただの人です。私の住んでいる大田区(人口70万人)の先月の区会議員の当選ラインが3千票、大阪市では人口260万人で4千票あれば当選ということからすると、区議選での当選はなかなか大変で多くの現市会議員にとっては5区への分割は恐怖であるのが容易に想像できます(大田区の議員定数は50人とかなり多く、これを今回の都構想並みに15人くらいにすると当選ラインはもっと上がります。人口260万人で24区を選挙区とする大阪市会議員がいかに安楽の椅子かわかろうものです)。
いずれにしても、17日の住民投票の帰趨は極めて重要です。大阪が(この場合現大阪市だけでなく周辺市域も含んで)日本の二極の一方担えるのか、引き続き長期低落にあえぐのか。首都圏直下地震を考えると、副都として隣接県とも連携してバックアップ態勢を整備することは喫緊の課題であることは明白です。
現在の場所に安住している時間はこの日本第二の都市にはないことを認識しなければなりません。
東京在住者のあえての発信です。出すぎたまねですが。