夫ワサビ（イギリス人）、愛娘バナナ（2歳半）が生まれた当初、バナナを抱っこしている時はよくビートルズの「I will」という歌をうたっていた。
優しいメロディに「いつまでもどんな時も変わらず愛してるよ」と言った歌詞がついている曲。
たまたま、今日運転中にラジオでこの曲が流れた。
久しぶりにこの曲を聴いたせいか、バナナが生まれたばかりのあの頃に思いが馳せた。
最近はめっきり歌わなくなったけれど、あの頃のワサビは、どんな想いでこの歌を口ずさんでいたのだろう、改めて歌詞をしっかり聴いていると少し胸が熱くなった。
バナナが生まれた当初はまだまだ断続的に飲んでいた。週に何回か私に隠れて。
それでも、日中は仕事をしていたし、連続飲酒に陥らなければ、わりあい普通の生活を送れていたわけで、私は彼なりにコントロールできている、そんな風に思っていた。
でも実際は、飲みたい自分と飲みたくない自分の葛藤が苦しくて、綱渡りをしているような感覚だったのだそうだ。飲みながら日常生活を回していくためには相当な労力が必要で、精神的にも肉体的にもかなり疲弊していたのだと、ここ一年シラフなワサビは教えてくれた。
そういえば、当時は全く余裕なかったもんな。
確かに新生児抱えて寝不足の母親よりも精神的にはアップアップしていた。
そういう事だったのかと、今更合点がいく。
飲んでもつらい、
飲まないのもつらい。
どちらの苦しみからも逃げられない。
何も変わらないし、
救われる道もない。
今はなんとかつなぎ止めているけれど、闇に落ちるのは時間の問題なんだろう。
そしたら、自分も違わず家族も仕事も大切なものは全て失うのだろう。
こんな絶望感とつねに隣り合わせだったのだと。
「バナナを心から愛している、もし、会えなくなったとしても、関係ない。いつまでも変わる事なく君を愛しているよ。」
そんな思いがきっとこのポールの歌う曲に重なっていたのかもしれない。歌っている時はどこか寂しげだったから。
バナナが生まれたからと言ってなくなるわけではない贖えないほどの飲酒欲求。
どんなに大切な守るべき人がいても、傷つけるとわかっていながら飲んでしまうその苦しみ。自己嫌悪と絶望感。
アルコール依存症患者は皆きっと少なからず経験しているであろうこの想いは、アルコールを普通に摂取できる人々には一番理解されにくい苦しみの一つなのだろうと感じる。
私はたまたまそこまで傷つく前に、ワサビが自ら立ち直ってくれた。
だから、アルコール依存症者の家族として傷ついてきた立場ではなく、ワサビの立場に焦点をあてられるのだろう。
でももし、今も一年ちょっと前と同様、のらりくらりと飲んでいたならば、遅かれ早かれワサビから受ける様々な仕打ちに傷つき、心を病み、彼の病気と彼の本来の資質の境目を見失い、希望もなくして、いずれは離れて行くことになったかもしれない。
泥沼にハマって、バナナにも影響がでないよう極力会わせずに済むように、頭をフル回転させたかもしれない。
そんなことになっていたら、ワサビにとってはビートルズのこの歌はバナナへの叶わぬ片想いのラブソングになったのだろう。
そしたら、ワサビにとっては世界一美しくて世界一悲しいラブソングだろうな。
昨晩、ワサビが言っていた。
「ここ最近、全く飲酒欲求がないんだ。16歳でお酒を飲み始めてから、こんな事初めてだと思う。」
最近とても穏やかないい顔をしてすごしている。
父の日にはバナナからのビデオメッセージを作った。
「Daddy 父の日、おめでとう。」
「いつもお仕事、ありがとう」
「I love you」
2歳児なので、どこまで分かっているのか謎だけれど、I love youは心を込めてとびっきりの笑顔で言っている姿が撮れた。
ワサビ君、バナナとはちゃんと両想いになれてるよ。
いつまでもいつまでも、変わらずずっと両思いでいられるように、私も祈ってるよ。
どうか明日も心穏やかに過ごせるといいね。
Beatles - I will （YouTube)
Who knows how long I've loved you
You know I love you still
Will I wait a lonely lifetime?
If you want me to I will
For if I ever saw you
I didn't catch your name
But it never really mattered
I will always feel the same
Love you forever and forever
Love you with all my heart
Love you whenever we're together
Love you when we're apart
And when at last I find you
Your song will fill the air
Sing it loud so I can hear you
Make it easy to be near you
For the things you do endear you to me
Oh, you know I will
I will