【デビト】義眼のメモリア ⅩⅠ | B→Cabinet

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驚いた様子のデビトに、男が言った。
「あのお嬢さんがお前の“弱点”か?くくく」
「!」
デビトは目の前に居る男を睨み、すぐさま自分の来た道を戻ろうと石畳を蹴った。
下卑た笑い声を、その背に受けながら。

――クソッ、もう一人居やがったのか。

暗い道を駆けながら、デビトは自身の迂闊さを呪った。
目の前の“敵”に気を取られ、近付くもう一つの気配に気付かなかったとは。
平穏な毎日に慣れ過ぎた。
今までの自分ならば、こんな事には――。
そこまで考えて、デビトはその先を否定する。

――違ェだろ。

無意識に唇を噛んだ。
“平穏な毎日に慣れ過ぎた”?
――違う。

――ンなモン、自分(テメェ)の勝手な“言い訳”じゃねェか。

そう、それはただの“言い訳”。
その“平穏な毎日”を与えてくれたのは、他でも無いフェリチータだ。
闇から救いあげてくれた彼女に貰ったものを、どうして否定出来るだろう。
自分が望んだものの所為にするのは、間違っている。

――コレは、俺が蒔いた種だ。

巻き込むまいと、フェリチータを避けた。
その結果、逆に彼女を危険に晒している。
デビトは更に強く、唇を噛んだ。
血が滲む程に、強く。
自分で自分が、赦せなかった。

――あの時。

優先すべきは“敵”では無く、フェリチータだった筈だ。
愛しくて、大切な存在である彼女の傍に居る事こそを。
何よりも、優先すべきだった。

――コレは、俺への罰なのか。

フェリチータが抱える不安よりも、身勝手に自分の汚点を消す事を優先させたのだ。
――いや、そもそも。

「罰を受けても、文句は言えねェ立場だろ。俺は」

さっきの男の事も、今まで消してきた人間の事だって。
無理矢理、与えられたとは言え、その能力を使って自分がやってきた事に、違いは無いのだ。
――それでも。
デビトは雲の隙間から、顔を覗かせた月に向かって吠える。
「・・・罰を受ける覚悟なんざ、とっくに出来てんだよォ!」

――それでも、フェリチータと共に歩む“未来”を諦めるつもりなど、デビトには更々無かった。




《続く》