前回→【デビト】義眼のメモリア Ⅸ
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闇の中を、音も無く駆ける。
――性懲りも無く、現れやがって。
「チッ・・・待ちやがれ!」
デビトの怒号が響く。
すると、デビトの前を走っていた男が立ち止まった。
男は薄ら笑いを浮かべている。
「ハッ。見たコトある面だと思えば、テメー、この間の・・・」
確か、そこかしこで騒ぎを起こしていた余所者達の一人だ。
ついこの間、自分が潰した一派の残党。
デビトは小馬鹿にした様に、笑った。
「この俺サマが寛容にも、見逃してやったってーのに、ノコノコ現れるとはなァ?――人のデートに、水を差すんじゃねェッての」
デビトは懐から、銃を取り出す。
――やっぱ、見逃すんじゃ無かったゼ。
今までならば、絶対に有り得なかっただろう。
“敵”を見逃すなんて事は。
フェリチータの影響は、自分で思っているよりもずっと大きいらしい。
「とっとと、レガーロから失せナ。でないと、次はホンキで当てちまう、かもなァ?」
男を鋭い目で睨みつけた。
しかし、男は怯む事も無く、デビトを睨み返す。
笑いを堪えながら、男は言った。
歪んだ笑み。
「ははっ・・・お前らの所為で、俺達の居場所が無くなったんだ。・・・ここまできたってのに・・・!」
「ンなモン、知るかッての。“アルカナ・ファミリア(俺ら)”のシマを荒らしたのは、テメェらだろォ?勝手なコト、ほざいてンじゃねェよ」
逆恨みも良いとこだ。
デビトはげんなりした様子で、銃を構える。
――もう、終わらせてやる。
一思いに。
銃口を男に向け、構えた。
デビトの指が、引き金を引くその瞬間――。
「きゃあああぁぁぁ!」
甲高い悲鳴。
デビトは思わず、声がした方へ顔を向ける。
自分が走ってきた方向を。
「!?」
デビトは悲鳴が聞こえたから、顔を向けたのでは無い。
その声の主が、よく知った人物だったからだ。
――聞こえてきたのは、紛れも無くフェリチータの悲鳴だった。
《続く》