前回のお話→【母と娘】みんなのクオーレ5
アルカナ・ファミリアの敷地内に立てられた教会。
その教会の前で、特に何かをする訳でも無く、ただそこに佇む影が一つ。
ルカだ。
フェリチータ――スミレ――が近くまで寄っていくと、ルカは気配に気付いて顔を向けた。
にっこりと笑うと、
「お嬢様、どうかされましたか?」
「ルカに訊きたい事があるのよ」
「訊きたい事、ですか?」
目を丸くして、ルカは首を傾げる。
「“アルカナ・デュエロ”について、ね」
「・・・」
ルカは目を細めた。
フェリチータ――スミレ――は黙っているルカの事は気にせず、そのまま続ける。
「ルカは“アルカナ・デュエロ”について、どう思ってるの?」
「私は――」
言いかけて、思案する。
ルカは口にする言葉を選んでいるのか、暫く黙っていた。
フェリチータ――スミレ――が、下からルカの顔を覗き込む。
訝しむ様に訊いた。
「ルカ?」
ルカが慌てて、
「あぁ、すみません。・・・その、確かに最初は驚きました。でも、パーパはきっとお嬢様の事を想って、“アルカナ・デュエロ”を――」
「聞きたい事は、そうじゃないわ。ルカ、貴方の気持ちを聞きたいの」
真っ直ぐ、ルカの目を見て、言う。
ルカは帽子で顔を隠した。
泣いているのか、笑っているのか。
「ルカの本当の気持ちは――」
「お嬢様」
フェリチータ――スミレ――の口に人差し指を当て、ルカはにっこりと笑った。
――これ以上は訊くな、と言ったところかしら。
無言のまま、優しげな笑顔を見せるルカの身体をそっと押した。
「?お嬢様・・・」
「これは忠告よ、ルカ。貴方の取っている行動は、フェリチータ(私)の為じゃない」
「・・・」
「それはただ“逃げてる”だけだわ。――貴方自身の“心”から、ね」
「ッ!」
苦しげな顔でこちらを見るルカを、フェリチータ――スミレ――は一瞥すると、溜め息を吐いた。
「先に館に戻るわね」
そう一言、言って彼の許から離れる。
残されたルカは、ただ彼女の背を見詰めていた。
《続く》