前回のお話→前回
「あっ、お嬢!」
「パーチェ」
声のした方を振り向くと、パーチェが手を振りながら近付いて来るのが見えた。
「どこか出掛けるの?」
「ルカを捜しているのだけど・・・」
――ルカの前に、パーチェに出逢ったわね。
「ん?ルカなら、教会にいたよ」
「教会に?」
「うん。あそこはおれ達にとっては、良い思い出も悪い思い出も詰まってる大切な場所、だからね」
そう言って、過去を懐かしむ様に目を細める。
その様子に、フェリチータ――スミレ――はほんの一瞬、顔を顰めた。
パーチェ達の過去を知っているからだ。
パーチェが不意に、
「そうだ、お嬢。ちょっと、聞いて欲しい事が・・・いや、やっぱり良いや」
「パーチェ?」
首を振って、パーチェは軽く笑った。
「ごめん。今のは、聞かなかった事にしてくれるかな?」
「どうして?」
「ええっと」
困った様な顔で、パーチェは視線を逸らす。
本当は「聞かなかった事にしてくれ」とパーチェが言った理由が何なのか、彼女には解っていた。
それでも、敢えて訊いたのは、パーチェ自身に、気付いて欲しかったから。
自分のしている行為が、どれ程“大切な人”を傷付ける事になるかを。
フェリチータ――スミレ――はパーチェに背を向け、言う。
彼が抱える想いと、問題の大きさを知りながら、淡々と。
それが彼の為だと、解っているからこそ。
「・・・パーチェ、“本当の事”を言うのは、確かに勇気がいる事だと思うわ。けれど」
例え、全てを話す事を彼が望んでいないとしても。
「“大切な人”に隠し事をされるのが、どれ程辛い事か・・・想像、出来るかしら?」
「!」
はっとした様に、パーチェはフェリチータ――スミレ――を見た。
しかし、既に彼女の背は小さくなっている。
――ここから先は貴方次第よ、パーチェ。
パーチェが“全て”を知ったあの日から、絶える事の無い笑顔の理由。
それを“優しさ”だと、誰かは言うかもしれない。
でも、隠し続ける事が全て“優しさ”だとは限らないのだ。
「“想い”は言葉にして初めて、人に伝わる。――伝える前に全てを諦めてはいけないわ、パーチェ」
フェリチータ――スミレ――は誰に聞かせる訳でも無く、そう呟いた。
《続く》