福岡の天照宮には饒速日命が祀られる。
彼は垂仁天皇の時代に笠置山に降臨したと伝えられている。
「日本書紀」では、その時代にツヌガアラシトと天日槍の記載があった。
★前の記事
★目次
☆1 天照宮の饒速日命
☆2 「日本書紀」のツヌガアラシトと天日槍
☆3 「古事記」の天日槍
☆4 共通点
天照宮の饒速日命
福岡の天照宮(てんしょうぐう)には、饒速日命が祀られている。
天照宮
所在地 福岡県鞍手郡宮田町大字磯光字儀長(合併後の地名は宮若市磯光)
祭神 天照国照彦天火明櫛玉饒速日
八幡大神、春日大神、応神天皇、天子児屋根命
神社の由来は、貝原益軒著の「鞍手郡磯光神社縁起」によれば、饒速日尊が垂仁天皇十六年に宮田町の南に聳える
笠置山頂(四二五メートル)に降臨し、
同七十七年に笠置山頂に奉祀したことに始まります。
参拝した当時は、饒速日命が何故、垂仁天皇の時代に降臨?と思った。
それは「日本書紀」の記述に関係があったのだ。
「日本書紀」のツヌガアラシトと天日槍
「日本書紀」には、垂仁天皇の時代に都怒我阿羅斯等(ツヌガアラシト)が来日したとある。
彼は比売語曾(ひめごそ)神を追って渡来した神。
同じ項で、天日槍の記述がある。
しかし、「古事記」には、それが応神天皇の項に天日槍として記載されていた。
三つの記述を見比べてみる。
ツヌガアラシト(「日本書紀」垂仁天皇の項)
ツヌガアラシトは新羅の国の王子。
彼が国にいた時の話。
自分の牛がある家に入ってしまう。
それを見ていた翁に言われる。
「その家の主は牛を殺して食べてしまう。牛の代わりに村の神が欲しいと言え」
そう言うと村の神と言う白い石をもらった。
石が乙女の姿となり、夫婦となる。
しかし、彼女は「東の方へ行く」と言って居なくなる。
彼は追い求め、日本に入った。
童女は難波に行って、比売語曾社(ひめごそのやしろ)の神となる。
また、豊国の国前郡(みちのくちのくに)に至りて、比売語曾社の神となる。
(岩波文庫「日本書紀」より概要)
天日槍(「日本書紀」垂仁天皇の項)
三年の春三月に新羅の王子の天日槍来たり。
持って来たものは、
「羽太(はふと)の玉一つ。足高の玉一つ。鵜鹿鹿(うかか*輝くか)の赤石の玉一つ。出石(いづし)の小刀一口。出石の桙(ほこ)一枝。日鏡一面。熊の神籬(ひもろぎ)一具。
あわせて七物(ななくさ)あり。
但馬国に納めて、神宝とする。
(岩波文庫「日本書紀」より概要)
「古事記」の天日槍
「古事記」は上の二つを合わせたようなものになる。
天日槍(「古事記」の応神天皇の項)
昔、新羅の国王の子、天日槍(あめのひぼこ)が海を渡ってきた。
彼が日本に来た理由はこのようなものだった。
ある女を日光が照らし、やがて赤い玉を産んだ。
男がその玉を盗み、包んで腰につけていた。
牛に飲食物を背負わせて歩いていたら、天日槍に会った。
彼は「お前は牛を殺して食べるのだろう」と男を牢にいれようとした。
男は赤い玉と引き換えに、放免された。
その玉は美しい乙女になり、天日槍と夫婦となる。
が、喧嘩して彼女は祖国へ帰ると言って、海を渡って難波へ。
これが難波の比売碁曽(ひめごそ)神社の阿加流比売(あかるひめ)という神である。
天日槍は追いかけたが難波の神が遮った。
そこで但馬の国へ行き、そのまま留まった。
その国の娘と夫婦に。その五代孫が葛城の高額比売(たかぬかひめ)命。
神功皇后の母である。
天日槍が新羅から持ってきたものは、
玉津宝と言って、緒に貫いた玉二連。
浪振る領巾(ひれ)、浪切る領巾、風振る領巾、風切る領巾
奥津鏡・辺津鏡
合わせて八種である。
(角川文庫 中村啓信氏 訳注「古事記」参考)
*応神天皇の項に記載されているのは、神功皇后の母の高額比売命が、天日槍の子孫であると示したいからだ。
共通点
共通点として。
☆1 新羅の王子
☆2 牛
☆3 石(神の石)か、玉(赤い玉)が乙女になる。
☆4 二人は夫婦に
☆5 乙女は難波へ行き、ヒメゴソ神となる。
☆6 天日槍は但馬国へ。
☆7 神宝を持ってくる。
比較してみて、伝承でこれだけ同じならば同神と言える。(ヒメゴソ神が同じ)
「日本書紀」ではツヌガアラシトに足りないところを、天日槍で付けくわえているようだ。
☆天照宮の饒速日命は、垂仁天皇の時代とあった。
事実としてはあるわけないのである。
彼は「神代」の者なのだから。
しかし彼には上の共通点があった。
(次回)
彼が高良神であるゆえに、筑紫(福岡)で繋がるのだ。
現人神社にツヌガアラシトが祀られていた。
彼から饒速日命へと繋がっている。
( つづく )
*参考
岩波文庫「日本書紀」
角川文庫「古事記」中村啓信 著
記事内の考察や写真、イラストなどの使用は著作権のルールに沿ってくださいますようお願いいたします。
*******************************************
X(Twitter)
古代や神のこと、少しずつつぶやきます。
小分けなので分かりやすいかもです
フォローお願いします
https://twitter.com/sakura15335?t=zywdh8uJGIhzvxAk28C_Tg&s=09