クーカーの怪談 二十五話 『バッグを忘れただけなのに』 | クーカーの 笑説

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コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

深夜。

タクシーは若い女性を乗せた。

花束が顔を覗かせている紙袋2つとピンク色のバッグ。

車が彼女の自宅があるマンションに着く頃には、暖かさか疲れからか寝てしまっていた。

『はい、着きました。』

ハザードボタンから指を離し、ミラー越しに声を掛けた運転手。

「あ、はい。」

スマホで支払う。

大きく開いたドアから冷たい空気が入ってきた。

バッグにスマホを戻してから紙袋の取っ手を握る。

「お忘れ物にご注意下さい。」
運転手は振り返ってバッグと紙袋を確認した。

「はい。」
この眠気は冷たい空気でもすぐには覚めず、タクシーを降りてから二、三歩ふらついたが、紙袋を持ちなおしマンションへ消えて行った。

運転手は、次の客をとりに最寄り駅に向かう。

左折の時だった。

視界の端にピンク色が見えたのだ。

「ん、あれ?
      さっきのお客の忘れ物だ。」

車を寄せるとピンク色のバッグを確認した。

落とし物の情報を配車センターに報告しようとしたが、
先ほどからの疑問がそれを止めてしまう。

「やっと思い出したぞ。
     あの子、アイドルグループの子だ。

    すると、あのマンションに。

     困っているだろうなぁ。

     まてよ、
        こんなチャンス無いだろ。

     俺はあのグループの子にいくらつぎ込んできたんだ?」

運転手はバッグを開ける。

    スマホ、財布、テレビ局のパス。

「おおっ、おおっ!」
興奮した運転手は素早く助手席の下にバッグを潜り込ませると、車を出した。

基地に戻り、仮病で帰宅する。

家に帰り、バッグの中身を全部あけると、スマホのGPSをOFF。
機内モードでアルバムを見てやろうとしていた。

しかし、ロックがかかっている。

次に
化粧品も見つけた。


運転手はリップを摘まんで眺めていた。





翌日。


某テレビ局のスタジオ。

司会者がアイドルグループの紹介をしている。

タモル
「年末は? 忙しい?」

アイドル
「はい、○○ちゃんが来年卒業で、
     みんなで歌うのは最後なんですよね。」

タモル
「あ、卒業。
      お疲れ様でした。
          俺も司会者卒業したいんだよなぁ。
    うそでーす。
       じゃスタンバイお願いしまー。」


アイドルグループがステージに上がる。

「キャー~」

イントロが始まると

「ギャーーー!」
       「ギャーーー」

タモル
「は?」

アイドル達も異変に気付く。

一人のアイドル
「フライングベッド〰
      ホテルですぐに。

    スプリングの硬さを確かめるぅ〰」

センターのアイドル
   「このオジサン、変なんです。」

パツパツの衣裳を着て隅でノリノリで踊るオジサン。


タモル
「なんだ君は?」

オジサン
「なんだチミは?
        って言った?
       なんだチミはってか?」

タモル
「このパターン。」

オジサン
「ただのタクシードライバーです。
      いやぁ、
          昨日、バッグを拾ってね。
     ○○ちゃんが卒業なんで一緒に踊ろうかと。」



ガードマン
「確保!」

タモル
「ま、わかるっちゃーわかる。」