マイクロプラスチックなんて大騒ぎするから、こんな刑務所ができるんだ。
ま、気楽にやるか。
15年も経てば、ハイテクマシンで一瞬で分離なんて終わるようになるさ。
そしたらモニターでも眺めてりゃ1日が終わるかもな。
なんて、
足下のゴミを右足の長靴で掻き回していた。
『ブゥー、ブゥー』
なんだ?
ゴミの山にはブタがいるのか?
『ブゥー、ブゥー、オイッ!』
誰かに作業服の襟を掴まれた。
「離せっ!」
山野は振り返る。
『ブゥー、ブゥー
死にてぇのか新入り。』
山野は後退りした。
軍隊のような防毒マスクの男がいた。
ほころびてる作業服。
薄いラバー手袋。
腰には工具袋を下げている。
まさに職人のいでたち。
『新入り、紙マスクなら極力息をするな。
浅く息をするんだ。
キサマの懲役の年数に興味はねぇが、
ここでポックリか、
シャバで寝たきりになりたくなければ、成果を出せ。ブゥー。
そのカゴ一杯の金属でマシなマスクに変えてもらえる。
死にたくなきゃ集めるしかねぇ。
19時までが作業だ。
明日にゃリセットされる。
今日中だ。カゴ一杯にしろっ。』
ブゥーはマスクから漏れる息の音だ。
『あそこの空気口まで行け。
そこの空気はまだ吸える。』
「はっはい。」
とんでもないところだ!
山野はクロールのように空気口までカゴを引いた。
息もまともにできない刑務所。
本当に地獄じゃないか、
どうしてもマシなマスクを手に入れないと。
カゴ一杯の金属。
目を凝らしてもオモチャのネジしか見当たらない。