《ガサガサ》
「き、来やがったか?」
監督は、布団の中の三脚を握りしめる。
布団をはいで、反動をつけて起き上がると、入り口に三脚の先を向けた。
ここで悩んだ。
料理人が入り口を開けた瞬間に飛びかかるか、
それとも皆を起こして、避難、あるいは加勢させるか。
体は入り口に向けて、右足の爪先を隣の音声スタッフの布団の膨らみに擦り寄せた。
「あれー」
誰かの声だ。
「どうしたっ?」
監督
「足が無い!」
その声の方を向くと、一人のスタッフが膝から下が斬られていた。
監督の血の気が引く。
「うそ、だ。」
もう ここに、あいつがいる。
三脚を振り回し、布団の膨らみをはがして行く監督。
「皆、逃げろ、早くロケバスへ走れ。」
監督
「こっちも無いよ。足。」
また声がした。
「えぇっ!
俺たちを動けなくして、
それから・・・・」
監督は夢中で三脚を振る。