RIVER KID 1 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

「まだ着かねぇのかよ。
   俺の 分きざみのスケジュールが、ズレまくって
    アッウ! 」

「すみません。急ぎます。」
運転手

山奥の林道。

舗装はされておらず、木の根っこは遠慮なく道路にコブを作る。

「いや、飛ばすなよ。
       俺が跳ぶから。  アッう! 痛っ。」

道幅いっぱい。
   いや、それ以上のボディーのマイクロバスが、進んでは跳ね、跳ねては進んでいた。

「あ、ここだ。
      やっと着いた~。」
若いお兄さんはスモーク貼りの窓から旅館の光る看板を覗くと、バスから飛び出し、後ろに走る。
『オ、ラーイ ラーイ ラーイ』
 
「狭いなぁ、駐車場。」
運転手は手を揉んでからリバースギアを入れた。

『ラーイ ラーイ。』
お兄さんの顔がバックランプに照らされるほど日は落ちていた。

《ピィィピィィ  ピィィ…》
バックアラームが鳴ったり止んだり。
何度も切り返してロケバスは駐車場に入った。

『ストーーー  プ』
最後に赤く光ったお兄さん。

今度は旅館の玄関に走ると荷物の置場所を訪ねた。

「ふぅ、腰痛ぇ。」
ロケバスから降りて伸びをすると、玄関に歩く男。

お兄さんは引き返すと、他のスタッフに指示を出し、すぐに荷物を運び始めた。

運転手はロケバスを一周して、リースの車に傷がないか調べていた。

番頭さんが男を出迎える。
「ようこそ監督さん。
    お疲れでしょう、お部屋へ案内します。」

監督という男は玄関の明かりの下に来ると
「今日からお世話になります、
    チーフプロデューサーの山本です。」
と名刺を渡した。

そしてキョロキョロと飾り物やパンフレットを見回した。
「あのう、さっそくなんですが、
    本当に、本当に出るんですか?
  例のアレ。」

番頭
「ええ。
   出るんですよ。

    いい温泉が。」

監督
「いや、温泉じゃなくて、アレですよ。」

番頭
「あー、アレね。
     それは詳しい方がいますので明日ご案内致します。
   どうぞ今日はごゆっくり。」

監督
「あ、はい。お願いします。」

この旅館 アレが出るらしい。