「お父さん、おかえりなさいませ。」
玄関で正座して、指をついておじぎをする。
「た、ただいま。
おい、なんだぃユウシ。
気持ちわりぃなぁ。」
父がネクタイを緩める。
「お父様、一生のお願いがあります。」
「あれだろ?
ゲームの本体だろ?
もう中学なんだからさ、ゲームばかりやると、」
「お父さんみたいになるよねぇ。」
「そうそう、っておい!
一生のお願いってなんだ?」
ソファーに座る。
「一生のお願いはやっぱりやめた。
今年のお願い。」
と言いながらお茶を差し出す。
「お母さん、ユウシがおねだりだ。」
お茶に口を付けるのをためらう父
「これを見て!」
パンフレットを父に渡す。
「なんだ?
ほらゲームだ。
飛行機のCGが書いてある。
VRのゲームって高そうなもの見つけてくるなぁ。」
父
「あなた、それ、英会話教室なんですって。」
母もソファーに座る。
「え?
勉強をしたいってこと?
なんでまた英会話なんだ、そろばんでも習字でも役にたつぞ。
今時、英語なんて翻訳機の安いのも売ってるし、」
「お父さん、
もし近所に、アメリカ人のそれはそれは美人な奥様が引っ越してきて、
日本のゴミ出しルールがワッカリマセーン、教えてクダサーイ。
なんて言われたらどうするのさ。」
「大丈夫だ、
その美人奥様は日本語はできてる。」
父
「???
ほんとだ。」
ユウシ
「へたくそ。」
母