診察台、つまり歯医者の椅子がどんどん上に上がる。
この上は天井でそこに頭が着くのではないか?
いや、真上の部分だけ長方形にスライドして穴が開いた。
その上は真っ暗。
天井の穴を抜けて二階部分に来たのだ。
それでもまだ椅子は上がる。
≪クフゥン≫
椅子が止まる。
そして周りには圧迫を感じる。
≪コ、コ、コ、コ、コ・・≫
僕の周りにカラフルな小さなランプが点きはじめる。
≪グーン、クッ≫
右手の前にゲームのジョイスティックが下から出てきた。
左手にも。
それを握る。
≪バァー・・バァー・・バァー≫
警告のようなブザーが鳴り出すと、正面の壁に光の線が縦に入る。
それは観音開きで外側に開いた。
外の明かりの縦の線の幅が広がると、
僕の周りが徐々に明るくなり
驚いた。
ここは飛行機の操縦席。
飛行機の床下から椅子ごとセットされたようだ。
上は分厚いガラスのキャノピー
後ろに無理やり顔を向けると主翼が広がっていた。
これで、
怪鳥を倒すのだ。
先客のおじさんが言ってた冒険て、
これのことだったのか。
ファーイブ
フォー
イグニッション
トゥリー
トゥー
ゥワン
「行くぞ!!」
ありがとうございました。
本日はここまで。です。
突然
店員の声。
体験入学はここで終わってしまった。
しばらくぼうっとしたが、
≪スチャ≫
っと店員にヘルメットをはずされた。
頭皮に涼しい風が当たる。
それだけ僕の頭はホカホカだった。
手元にジョイスティックは、ある。
それ以外は全て入って来たときのままだった。
歯の断面の表も
歯の模型もある。
この椅子もキズひとつない。
壁の大きな穴もふさがっている。
ガラスの棚も立っているし。
そして、先生も消えていた。