「待て待てぇ。」
鬼掃除機を目で追う息子。
「あら、なにしてるの。
おもちゃじゃないんだから、触っちゃだめでしょ!」
パンフレットから目線を下ろすと、掃除機牧場の柵に掴まる息子。
そしてひっくり返った掃除機たち。
「何やってんの、まったく!
直しなさい!」
母親はパンフレットを丸めて、木魚のようにポカポカ叩く。
《ポコ ポコ ポコ》
「や、だ、よー。」
「お決まりでしょうか?」
店員が近づくと、母親は向きを変えて、牧場から目を反らさせた。
それでも、後ろで息子を叩く。
「よーし、生き残ったコイツと、鬼で勝負。
死んだヤツに触ったら負け。GO!」
「うん?僕、鬼ごっこかい?」
店員
「そう、勝った掃除機買うから。」
息子
「そうなんだ。」
店員
「あんた何を言ってんのよ。」
母親