鉄の園 7 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

それからは隣の部屋の歌声はなくなった。

地元の新聞を借りて読む青年。

テレビ欄には昔のドラマの再放送があって、他に観るものもなく、それをつけていた。

昭和のドラマでヒロインは、
上野 明実。
若い女優だ。
といっても本業は演歌歌手である。

ぎこちない演技ではあるが、清楚でかわいらしい容姿で人気があり、シリーズ化されたドラマだ。

ドラマの内容は途中から見たのでよくわからないが、背景の昭和のモダンな建築は青年の興味をひいた。

彼女の歌う、ドラマのエンディングテーマを聞き流しながら新聞を読みあさっていると、

老舗料亭が火事で消失した記事があった。

そしてチャンネルを変えると夜のニュースでも放送していた。

インタビューでは
もったいない や、
残念だ の声があった。

しかし若者は、特に関心もなく、
すごい火でした。
と自慢気に撮影した動画を見せる。

視聴者提供のテロップと
燃え盛る料亭の動画、
その周りには消防士と
スマホを掲げる野次馬の群れ。


そう考えると隣の女子高生は、建物の歴史に興味を持つこと自体が珍しく思えた。