「こんばんは、あのぅ、
こちらの地元の方ですか?」
と尋ね、またメモ張を手にしている。
「いや、ここには駅の現場調査の仕事で」
「そうですよね、ジモピー(地元人)が泊まる訳ないですよね。
え、え?
駅の調査ってあの駅のことですか?」
と声が高くなった。
「そう、すぐそこの。」
廃線マニアなのか、女子がテンションが上がるものではない。
「ちょっ、ちょっと来て」
と部屋の中の友達に手招きしている。
「こんばんは初めまして、私たちもあの駅の歴史を調べる為に来ましたぁ。」
とポニーテールの子が言う。
「そうですか、大学生さん?」
「いえ、高校生です。」
もう一人いた。
背の小さい三つ編みの子
「調査ってやっぱり、壊すんですか?」
寂しそうに言うメガネちゃん。
「うーん、今は半々というところなんだ。
文化財でもあるが維持費がかかるみたいでね。
土地の有効活用をするとすれば公園になったり住宅になったり。
そうなると、跡地の石碑だけになるかもしれませんね。」
「あのぅ、存続させるには市長に頼めばいいのですか?」
三つ編みちゃん
「そうだね、鉄道会社は消滅して、市の文化財だからね。
明日も朝から駅舎に入るから一緒に行くかい?
中には入れるか、許可をとらなくてはだけど、行くだけ行ってみる?」
青年は研究の手助けになれば
と思った。
「本当ですか!」
「入れなくても絶対行きます。」
「よろしくお願いします。」
「うん、じゃあ明日。7時ね。」
彼は自分の部屋にもどる。
女子高校生たちは
「やった、マジで」
「カメラのメモリーカード買ってくる。」
などとはしゃいでいた。