奥からガラガラの声が聞こえた。
段ボールを肩に載せて待つことにする。
・・・遅い。
着替えでもしているのだろうか?
「はいはーい。
すまないが開けておくれー。」
さっきより近づいているのがわかり、引き戸を開ける。
玄関からまっすぐ伸びた廊下におじいさんが1人。
摺り足で、ス、ス、スと少しずつ進んでいた。
そこの玄関まであとどれくらい待たされるだろうか?
「すーまなーいねー。
宅配さん、それを、こっちまで運んでもらえないかいねー。」
「おやすいごようで。」
どうやらこちらから向かうことで時間が短縮できた。
段ボール入りの布団を寝室に下ろして、伝票のサインをもらえば終わりだ。
「・・・どうしたもんかの。」
段ボールを眺めるおじいさん。
「あー、えーと。
じゃあ、段ボールから出してあげますよ。」
(時間が・・・)
「すまんねぇ。
私がやったら朝になっちまうでなぁ。」
「おやすいごようで。」
(朝になったら布団を買った意味がない。)
ささっと羽毛布団を広げた。
けっこう高そうにみえる。
「勧められて買ってみたんだが、
寝るだけで元気がみなぎるらしい。」
「ちょっと寝てみては?」
「そうかい。
眉唾ものだけど、こう足腰が悪いと元気に動きまわれる なんて言葉に弱くて。
寝るだけでなんて、そんなわけは・・・」
布団にヨタヨタ潜るおじいさん。
「・・・ホンマや!」
(急に関西弁。明石家さんまかよ!)