「ここは先週、柿をもらった家だ。」
荷物を抱えて表札を見る。
通販利用が多く、先週は大きな布団セットを運んだ。
おばあちゃんにうまい柿を2つもらった。
人あたりの優しいおばあちゃんだった。
「おはようございます。
レッドベレー運送です。」
しばらく待ったが返事がない。
再配達したほうが良いかもしれない。
車に戻ると、誰かが荷台をこじ開けようとしていた。
「・・・泥棒?」
やはりそのようだ。
ロックの部分を棒で叩いている。
「おい!何をしている。」
と強気に言ってみてから少し後悔した。
あの腕輪は車の中だ。
とんでもない屈強な男だったらどうしよう…。
「何だべ?」
と振り返ったのは、この家のおばあちゃん。
「あ、 お、おばあちゃん。
この前は柿をどうも、
で、何を、してるんですか?」
「何を?
良いものがあったらかっぱらってやろうと。
あんた、お金、あるかい?」
おばあちゃん
「う? ど、どうしたんですか?」
先週とまるで別人だ。
「お金、あるのかい?」
「いや、無いです。小銭しか。」
「そうかい。
じゃあ、そうさな、
あれ、あの腕輪。 よこしな。」
運転席の窓の外からシフトレバーにかかっている腕輪を指した。
「それは・・」