後の非常口から外に出るか。
犯人に体当たりして外に出るか。
今ごろ存在をばらして、トイレに行くふりして逃げるか。
そこで女子高生の一人が泣きはじめた。
(そうだ、人の為に生きる。
これはあの仏様の試練だ。
自分だけ助かろうなんて、情けない。)
荒俣は握りこぶしを作る。
バスが動いた。
犯人の男は顔ばかりか頭も良い。
自分のスマホで近くの修理工場を見つけた。
トラックやバスが専門の所で、今日は休みだ。
運転手にそこに行くように伝える。
運転手もそこを知っていた。
このバスの車検も頼んでいる工場だ。
大通りを離れて市街地を走る。
回送バスは誰も気に止めない。
ついに無人の修理工場に着いてしまった。
門には鎖と南京錠があり、入ることはできない。
おばさんを一人連れて南京錠の前に行く犯人。
2本の針金でクリクリやると南京錠が解けた。
鎖をほどいて門を開き、バスを中へ誘導する。
(今のうちにタブレット端末を起動するぞ。)
荒俣は電源ボタンに手をかけた。
≪ピィー≫