余命 24時間 22 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

石段を下ると若い女性が登ってきた。

途中ですれ違い、彼女は会釈した。
荒俣は会釈を返した。

(どこがで会ったことあるぞ。
 最近のようだが。
 会社かなぁ、思い出せない。)

道路に出て、バス停の表を読む。

まだ時間がある。

道の向かいに商店がある。

「バス代はとってあるし余裕も少しある。
  昼間っから缶ビールでもいってみるか。」

アルコールは弱いので気分だけでよい。
小さめの缶ビールを買った。

バス停のベンチに座り一口。

「うー、苦い。」
内ポケットから顔を出す遺書の封筒を押し込んでニヤリと笑う。

こんな昼間から酒のんで、呑気なサラリーマンだが、もし事故で死んだら、
やけになって自殺したとしか思われない。

それを想像すると可笑しくなった。


≪カコーン、カランカラン≫
缶が地面に落ちる音で寝ていたことに気づいた。

隣に女性が立っていて、すぐに尻をずらした。

「ごめんなさい。どうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」
女性が座って、白い紙袋から御守りを出して眺めている。

荒俣は頭を掻いた。
「あれ、何これ?」
デジャブだ。

「あ、これは交通安全の御守りです。」
女性が答えた。

何これ?に対してだが、荒俣はそれを聞いた訳ではなかった。

「そう、御守りなんですよ。
  貴女、前にも買ってません?ここで。」
と言っている荒俣もさまよってここに来たので初めてなのだが。

「いえ、母に聞いて買いに来たので。」

「そうですか。
   ごめんね酔っぱらいのおじさんで。」
(俺は何を言ってるんだ?)

「ここの御守りはすごいそうです。
   必ず守ってくれる環境になるって、母が。」

「そうなんですか。
   また今度来たら買ってみます。」
(財布を持って。)