余命 24時間 13 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

強盗の犯人の特徴にカブッていると知ると、何だか普通に歩いているだけでもソワソワする。

もう一度あのお寺に籠るしかない。

人気(ひとけ)のなくなった頃、バスで帰ることにした。

本当は犯人が捕まってくれればいいのだが。

ズル休みの天罰が下ったのか。
まるでお寺に引き寄せられるようだ。

石段を登りきってから気付いたことがある。



バス停の発車時間を見ておくんだった。

また下に降りる気なんて無い。
時間はたっぷりあるが、腹が減るだけだ。

本堂の木陰に腰を下ろした。

参拝に来た人の足音がする度に、本堂の奥に隠れた。


これじゃあ本当に逃走犯に間違われる。

「俺はちっとも悪くない。
      ズル休みしてるだけだ。」

タブレットの遺書の下書きも飽きて、することもない。
かといって出ることもできない。

トイレしかないオープンな刑務所のような所だ。

落ちてきたナナフシと遊んでいると、年寄りが数人来た。

モクモクと線香を焚いて拝んで行った。

腰を叩きながら年寄りが帰っていくのを見送っていると光る物を見つけた。

さっきの年寄りのコントロールが悪かったのか賽銭箱にバウンドして落ちた五百円玉を見つけた。

それを拾って、賽銭箱に入れてやろうと

する手が止まる。

2、3回賽銭箱の上を行き来した五百円玉は
荒俣のズボンのポケットに入ってしまった。

気の弱い荒俣は、代わりに財布の硬貨を全部賽銭箱に入れて、
「今回だけ見逃して下さい。」
と拝んだ。



下校する子供達の声が聞こえてきた。
一年生が帰ってくる時間だ。

そろそろ下に降りてバス停に向かおう。


カバンを持って、最後にもう一度だけ拝んだ。

「昨日から色々ありがとうございました。

   私は、
    もう、疲れました。


今まで気張っていたが、仏様の前では素直に苦悩を吐けた。

そして石段を降りる。