スーツ 1 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

2030年   3月

「スーツをくれ!スーツを

応答してくれ。

スーツを

スーツを       くれ。

だめか。
もう、ブレインダウンしそうだ。」


「はぁっっ!」
ベッドから飛び起きた男


「夢か。             まただ。
いや、最近同じ夢ばかりだ。
このスーツは、
不良品じゃねーか?」

自分の身体を撫でたり拳を握ったりしてみる。

左の手首を右の手のひらで肘に向けてスッと撫でる。

腕の内側に現れたディスプレイ

心拍数のパルスは徐々に落ち着きを取り戻しているようだ。

スーツのアイコンをタップすれば、身体の状況をスキャンする。

97点のスコアだ、問題はない。

ベッドの脇のボタンをペッと押す。
しわくちゃのシーツが一瞬空気を取り込み膨らんだ。
シーツの端はビュッとマットレスの下に巻き込まれ、ビシッと伸びた。

その頃、男はクローゼットに行き、鏡を向く。

鏡の右側にもアイコンがある。

一番上のアイコンを押す。

鏡の胸の高さに帯状に写真が映る。

この鏡はモニターでもある。

「うーん。」
写真の一枚に触る。
グレーのスーツの写真だ。

≪プン≫
鏡の中の男だけ着替えた。

裸の本人は腰をひねる。
鏡のスーツの映像も腰をひねる。