≪バンッ≫
原島はバスの側面を平手で叩いた。
その音に、暴行をしていたピッカーの一人がバスに振り返った。
「スィーホー‼」
「はん?」
「スィーホー?」
ピッカーがバスに注目すると、父の暴行は止んだ。
フエさんとヨーコさんがアスファルトに転がる父親に駆け寄る。
ピッカーの眼はバスの側面に釘付けだ。
観光バスに荒く吹き付けた黒いスプレーの塗装に怪しい物体が貼られた。
ピッカーがスィーホーと呼ぶ物体だ。
俺はこれを見たことがある。
あのポーチの中身だ。
カロリーメイトに似たバーフードと、針治療の器具だが、そんなものを貼り付けてなんになる。
ピッカーは何を驚くのだ?
「みんなで吹っ飛んじゃう?」
原島は基板にあるダイアルを回した。
針治療器具のアンペアだと思っていたが、
基板に数字が現れた。
それはカウントダウンを始める。
カウントダウン
+
吹っ飛んじゃう
+
スィーホー
=
C4
という計算が展開した。
バーフードなんかじゃない!
あれは、
時限式プラスチック爆弾。