≪ジィーィ≫
赤い光は激しくなる。
父のシルエットがはっきりと防空壕内に映る。
鉄の匂い。
「ヤバい!敵だ‼」高井
「なにィ?」原島
鉄の扉が焼き切られているのだ。
その閃光だった。
避難していた日本人は奥に固まる。
原島は机や機材を階段の前に運びバリケードを作る。
≪ゴォーン≫
扉に衝撃
かなりの圧力で押されている。
≪ピシッピシ≫
蝶番が吹っ飛ぶ。
≪バビン≫
遂に父の前に扉が倒れた。
銀色の大きな固まりが扉を突き破った。
自動車のボンネット?
いや、
偵察機の機首だ。
父はその場に伏せた。
サーチライトが点灯し、防空壕を照らす。
片隅の避難者と、立ち尽くす橋野。
「もう、だめだ。俺達。」橋野
「仏様」老婆
「この子だけは」ママ
皆、絶望した。
二人以外は。
「遂にあの作戦に移るか。」高井
「だな。」原島