ゆっくりフォーを味わってはいられない。
お椀を水を張ったポリバケツに投げ、とぼとぼと歩調を合わせて去る。
なるべく人を避け、観客席の隅に座る。
周りにはクタクタの兵士がベンチに横になり、仮眠をしている。
俺も座りながら体を丸めて寝たふりをしている。
目ん玉だけはフル稼働だ。
まず、兵士の装備…
銃や刀類は持っていない、腰には小さなリモコンのような物を下げている。
あの首輪を遠隔で締め付けるリモコンだ。
カバーがあって、寝返りをうっても誤作動はない。
寝返りに邪魔な水筒とポーチがベンチの下に置いてある。
ぶつかったふりをして、隣で寝ている兵士の肩を叩いた。
……あ。
もし、起きてしまったら…
シェイシェイか?
ニィハオ?
今さら焦ったがもう叩いてしまった。
顔を反らすしかない。
起きない。
良かった。
さっと、彼のポーチを頂いた。
また猿のように走って隅に逃げる。