ハグワン 14 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

-----------------------

『親会社の機体か、シミュレーションの通りにやれば問題ない。』

『厄介なことに左エンジンが火を吹いているらしい』

『どうだ《Pーー。》
燃料はもちそうか?』

『いや、もたないかも知れない。
だが全速力で向かう。』

----------------------

《Pーー》
という音に客席のほぼ全員がクルーの席に視線を向けた。


「名前を呼んだからね。
音をかぶせてる。
問題ないだろ?」
パイロットは静かに言う。

----------------------

『低空では燃料を使う。
成層圏へ』

『わかった。マスクを』

『みんな、マスクを!』

『ラジャ』『ラジャ』

---------------------

誰が話しているかはわからない。

ただ、ハグワンの操縦席の後方からの俯瞰カメラの映像が写されている。

画面の下の方で、クルーの頭が映る。

その幾つかの頭が酸素マスクを装置し終えると、風防のガラスから見える景色が暗くなっていった。



闇と無音の世界

レーダーの音しか聞こえてこない。


数分は、このままだ。


クルーの何人かが、パイプ椅子に反り返って腕を頭の後ろに組む

「早送りできますけど」
クルーの一人がリモコンを掲げる。

「いや、結構」
記者は一瞬たりとも目を離さない覚悟でペンを握り直した。


「いや、ご苦労様。」
そのクルーは、奥からダンボール箱を運んできた。

「あと43分は、このままさ。」
笑いながら、ペットボトルの水を差し出した。


記者は下を向いた。