「きりー、れー、ちゃくせぇ」
だらだらした号令に
ワンテンポ遅れて、立つ、礼をする、座る。
それもコブラの曲芸のような動きで、バラバラだった。
教師に威厳はない。
現に注意もされない。
間が持たないのか、担任の大西は出席簿を開いた。
そして何度も右手の掌で折り目をなぞる。
いない人は手を挙げて
という、しょっぱなに放ったギャグが懐かしい。
「相葉ぁ赤谷…」
間隔がない
「ゥイ」「はぃ」「はぁい」
大西は○付けに集中
誰かが代理返事しても気づかないじゃないの。
このチャンスにハートマークのシールを剥がす。
丸文字のスカスカの文面は
伝えたいことがあるので、今日の4時にひょうたん島に来て下さい。
この時点ではラブレターではない。
ニヤリと笑ってしまう。
担任が何か行事の連絡をしてた。
どうせプリントを配るのに。
解散となった。
アズサたちがこちらを見る。
私はすまして、呼び出しの封書を学ランのすそに隠す
すそを持って歩く。
今だ。
モテ男の机にピッと投げこんだ。
私はスパイとしては優秀だ。