デパートの時計台には、ぼんやりと白く光る大きなアナログ時計がある。
バチン
分針が無情に進んで、23時55分を指す
男は、うなだれて視線を落とすとデパートの前に行列ができているのに気づいた。
「オイルショックを思い出すなぁ。
あの日も、みんながパニックで、このデパートにならんだっけ」
男は曲がったタバコをくわえて火を付けた。
「いまさら何を買うっていうんだ。」
歩道にしゃがんで、行列を笑った。
眺めていると行列はデパートを通り過ぎて大通りを進んだ。
路地からも、ビルからも人が出てきて、無言のまま行列に合流する。
「な、なんだ。
ゾンビがさまようみたいじゃないか。」
タバコを踏み消して行列に付いて行くことにした男
人びとは、雨粒が小川になる如く合流していき、大通りを埋め尽くした。
ただ無言で、荷物も持たずに歩いていた。
男もただ歩いた。
そして目的地と思われるスタジアムに着いた。
そして男は驚いた。
「なんだこりぁ!
宇宙…船。」
スタジアムを覆う程、巨大な宇宙船が浮かんでいた。