タイル張りだった床がフローリングになっていた。
業者に頼まずマツさんが独りでコツコツと作業したはず。
これを一枚ずつ剥がすのも大変だ。
しかし剥がさないとボンベが破棄できない。
しばらく床板を眺める。
マツさんなら、何か仕掛けがあるはず。
部屋を見渡すと、ホワイトボードの裏にツルハシを発見。
イカリの形の道具だ。
左に傾けて立てかけてある。
近づくとやはり
ツルハシの先から槍のようにもう一本の鉄の棒がフローリングの下に伸びている。
「これはレバーだな」
左側に30度傾いた柄を、右に倒す。
《ギッ、キキキ》
ギアの音
右に30度倒して止まった。
そして振り返ると…
幅30センチの床板の一枚一枚がクルッと反転。
床板の裏にくくられたボンベ、全75本が一斉に現れた。
「まるで忍者屋敷だな。」
各年代のラベルがボンベに貼ってある。
空気を圧縮して詰める道具も発見。
今日の空気を一本に詰める。
それと、ある一本を残して、ボンベを破棄した。
この二本をアパートに持ち帰った。
工場に出向き、岡部さんに会う。
あの小屋はマツさんの所有地だと伝え、処分を依頼した。
さて、アパートに帰って、やることがある。
俺は、1993年以前の小銭と帰りのボンベとデジカメを持った。
さて準備完了。
1993年のボンベに口をつける。
マツさんと缶コーヒーで乾杯をするために。
おじさん少年記 完