軽トラを降り家に向かう
取材陣の塊の外側に野次馬が集まっている。
『あのお宅だったの?
おとなしそうな奥さんだと思ってたけどね~ぇ』
『見た目じゃわかんないわよね~ぇ』
『本当よね~ぇ』
バス停のおばさんも来ていた。
さっきはポテトごちそうさま。
家は雨戸が閉まり、静かだった。
山さんの胸ポケットから野次馬を眺める。
と
俺は背筋が凍った。
そして、ハッキリ思い出したのだ。
『山さん、山さんっ!』
『あーらやだっ。オホホ』
ポテトおばさんの声でかき消される
俺は山さんのネクタイをクイクイクイと引いた。
『うっうっウグッ、
どうしたどうした。』
ネクタイを緩める山さん。
『あのピアスの男。
見えるかい?』
野次馬の1人を指差した。
『あぁ首に入れ墨の?』
わわわ
声デカいよ山さん。
振り返ったじゃん
『あいつだよ。
強盗の1人だ。
俺、思い出したんだよ!』
『何ぃ?本当か。』
睨んじゃだめだよ山さん。
ほら、逃げた。