2月5日にシーズンインしてから既に1週間が経った。
初日は新体制の発表会、体力測定、そして今季からパートナーシップ契約を結ぶアンダーアーマー社による栄養セミナーを行った。
昨シーズンの全国3位という結果を受け、今年の目標は日本一を目指すためにまずは全国への挑戦権を得ようということで「インカレ出場」とした。
目標設定というのが結構難しい。あまりにも現実離れしていると単なる夢となってしまう。
かといってあまりにも現実的過ぎると多くの成長が期待できない。簡単ではないが必死になって手を伸ばせば何とか届くかもしれないというちょうど良いさじ加減が重要だ。
現実を見ると、昨シーズン後半のメンバーのうち8人が卒業した。
つまり昨シーズン後半の厳しい試合を経験したメンバーが3人しか残っていないことになる。
しかもその抜けてしまう8人の選手は1年生の時から試合に絡んでいたメンバーだ。
ということは昨シーズンだけの話ではなく過去4年間のリーグ戦を限られていたメンバーで戦ってきたことになる。そう考えると今年のチームは丸で新しいチームだと考えた方が良い。
そのようなチームが過去4年間積み上げてきて漸く実ったインカレ出場を目標に掲げて良いのかは正直微妙なところだ。しかし今まで試合に出られずうずうずしていていた選手たちのモチベーションと、プロ選手5人を輩出した環境で下積みをしてきたメンバーの底力があればもしかしたら手に届くかもしれない。そんな絶妙の目標設定だと思う。

選手の体力測定の時間を利用してシーズン前のスケジュールを確認した。
トップチームは来週月曜日からの沖縄キャンプ、キャンプ中Kリーグのチームとの練習試合、福岡遠征、Jクラブとの練習試合が主な強化プランだ。
一方Bチーム、Cチームは神戸遠征、そして何とスペイン遠征を控えている。
スペインではビルバオとバルセロナで練習試合を行いスペイン国王杯決勝を観戦する予定だ。経済的にはそれなりの負担がかかるが、決して無駄にならない経験であり今しか出来ない将来への貴重な投資だと思う。
体力測定後の栄養学のセミナーに顔を出した。アスリートとしていつ、どのタイミングで何を食べたら良いのか?運動→栄養→休息のサイクル、パフォーマンス向上の為には100%の状態で練習に参加するための体の土台作りが重要だということを様々な実例を元に話して頂いた。100%のコンディションで練習に参加して初めて100%、101%のパフォーマンスが発揮出来るというわけだ。
100%のコンディションを維持するためのアンダーアーマーが運営しているスポーツクラブでのダルビッシュのサプリメントの取り方、練習内容等が紹介された。
インストラクターが驚くほどいや、呆れるほどの徹底した栄養管理とトレーニング内容らしい。
「何故そこまでやるんですか?」
という問いに対するダルビッシュの答えは、
「自分は野球に関しては普通でいたくないんです。普通じゃいやなんです。普通でないようにするためには普通の事をしていたら駄目なんです。」
というものだった。
レンジャーズの入団会見で
「プレッシャーは無い。」と言い切り、
日本を去る時「世界中の誰もがナンバーワンというピッチャーになりたい。」
と堂々と言い放つ裏には普通ではない努力とその努力がもたらした自信があったわけだ。

かつての卓球の世界的名選手で現在ジャーナリストをしているマシューという方がスポーツ選手の才能について面白い考察をしている。
1990年代のプレミアリーグで9月から11月に生まれた選手が300人弱に対して、6月から8月生まれの選手は140人弱しかいなかったそうだ。神は9月から11月生まれの人に多くの才能を与えたのか?答えはNOだ。欧米では8月31日と9月1日では学年が変わることになる。9月生まれの選手は8月生まれの選手とでは同じ教室で机を並べ、同じカテゴリーでプレーをする。しかし若年層の時期に成長と習熟において9月生まれの選手は11か月間のリードをもって生まれたことになる。ある年代のチェコ代表についても述べられている。最近の年代別の世界大会では1月1日基準に世代を分けている。チェコのそのチームでは21人中19人が1月1日から6月30日生まれの選手で10月生まれから12月生まれの選手はいなかった。

当然様々な例外はあるが、彼が言いたかったことは「才能」は練習の質や量に比べたらさほど大きなことではないということだ。
2歳の時にはゴルフコースを回り、5歳の時には普通の人が生涯で行うのと同じ練習量をこなしたタイガーウッズの例やベッカム、クリティアーノロナウド、メッシの練習中毒にも言及している。
上記の誕生月の話は同年代で見た時も練習の機会が多い方が有利だったという一つの例だと思う。

結局普通以上の努力をやってきたかどうかが全てだと思う。
強いて才能に言及するなら普通でないことをやろうと思いやり続ける強さこそが才能なのかもしれない。
スポーツの世界は誰でも相手に勝ちたいと思う。しかし残念ながら思っているだけ勝てる世界ではない。その勝ち負けの境目は普通の事をやって満足するか、それとも普通ではない努力をするかの差だ。

シーズン終了を告げる最終戦のホイッスルを関東リーグのピッチで聞くかあるいはインカレの舞台で聞くか。それはこれから始まるシーズン中に普通でない努力をし続けられるかどうかにかかっている。