2年前にプロ入りした中町選手とサウサンプトンに移籍が決まっている李忠成選手が自主トレとして慶應の練習に参加してくれた。
中町は今季移籍した横浜Fマリノスの練習開始が27日なので昨シーズン終了以降あまり動かす機会が無かったようだ。
李選手はVISA待ちの期間を利用した自主トレだ。彼は1昨年末にも慶應に自主トレに来ていたが、その後日本代表チームに合流し、アジア大会で結果を出したのでゲン担ぎの意味もあったのだろう。

シュートを外したらダッシュして自分でボールを取りに行き、ボールの受け方、出した後の動き、ポジショニング、プレーの意図と当然だが学生と同じ事を言われ同じメニューをこなした。
慶應の大学生にもプロを目指す選手が何人かいて技術はそれなりに高い。8割9割位のプレーは中町や李選手と比べても遜色ない。でも1割か2割といったほんのわずかな部分が明らかに違う。それはゲーム形式の練習時の判断のスピードであったり、ボールスピードであったり、駆け引きの上手さであったり…説明するのが難しいがちょっとしたプレーの機微だ。
実際に紅白戦をやってみると自然に中町や李忠成にボールが集まる。最初は選手たちも彼らの名前で気後れしていたように感じた。しかし試合時間の経過と名前に対する気後れが薄れてくると、各プレーヤーが本能的にボールを失わないために、効果的に攻めるために最適なプレーを行うようになる。
「失わない」、「効果的」なプレーを行うために最適な判断を行った時の起点に中町や李がいることが明らかに多く、それが彼らに多くのボールが集まった理由だ。選手たちは肌でプロ選手の存在感を感じた事だろう。

練習終了して全体集合した時この日が練習参加最後となる李選手から一言頂いた。
「プロ選手になるとか代表選手に選ばれるかどうかというのはほんの紙一重の差だと思う。でもその紙一重がものすごく大きい。今回みんなとプレーして十分に上手いと思った。みんなにも必ず可能性があると思う。」と言ってもらった。
彼が言ってくれた可能性を実現するのはとてつもなく大きな紙一重の何かだ。選手だけでなく指導者も小さな事を見逃さずに紙一重の部分を追及することが重要だと思う。
翌日中町からも一言もらった。
「自分は湘南をクビになって慶應のソッカー部に入った。でもそこで今まで経験したことの無いような仲間達との様々なミーティングを通して、また本当に素晴らしいチームメイトに恵まれて責任感というものを植え付けられた。責任感というのはピッチ外の仕事に対してだけでなくピッチ内でのプレーに対してでも同様だ。みんなもしっかりと責任感を持ってプレーして欲しい。」
というようなことを話してくれた。サッカーである以上スキルやフィジカルの向上は重要だ。しかしそれらを最大限に発揮するためには、判断のスピードやその適格性も重要だ。
この辺の見えづらい部分は李選手が言っていた紙一重の要素の一つだと思う。しかしサッカーである以上当然ミスもある。その時どういうアクションをするのかでそのプレーヤーの人となりが見えてしまうことがある。プレーを最大限発揮するための判断に加えて中町が言っていた責任感の部分、これも当然見えづらいがこれも紙一重の大事な要素なのかもしれない。二人の話からふとそんなことを思った。

中町のマリノスでの活躍、李忠成のサウサンプトンでの成功を心から願っている。
そして彼らとプレーした慶應の選手たちが少しでも何かを感じ、紙一重に泣くことが無いように日々精進してくれることを願う。