東北の大震災によるダメージにより福島県の原発が使用不可能になってしまった。
単に使用不可能というだけでなく様々な影響が出て、その地域周辺に住んでおられる人々の生活に多大な不自由を強いる事となってしまった。その状況を二度と引き起こすまいという事で、菅総理は浜岡原発の活動中止を要請し、中部電力はその要請に従った。菅総理の要請は福島のように想定外の災害を受けた時に被る被害を最小化、あるいは無くしたいという事と、そのような災害が起きる確率がきわめて高いという事が理由だと思う。
起こり得るリスクの最小化というのを考える事はリーダーの大事な役目の一つだと思う。一方そのリスクの影響の範囲を考える事も重要だと思う。
今回のリスクは原発が被災した場合の影響そのものについてだ。もちろんそれが最大のリスクである事は間違いないが、短期的にはその結果の電力供給不足や産業界、家計等へ様々な影響があるはずだ。
一方受け入れた中部電力は、取締役会の決定を受けて発表されたが、その中で「総理大臣からの要請を極めて重く受け止めている。」という主旨の発言があった。それだけ一国のリーダーの要請は重いという事だが、要請はあくまでも要請であり法的な拘束力は無い。中電の取締役会は株主、社員、顧客等様々なステークホルダーのベネフィットの最大化という責務がある。本当に原発の停止を受け入れるのであれば、法的に受け入れた方が良かった気がする。何故なら法的要請であれば何故そうするべきかを明確にしなければならないからだ。要請の段階であれば、ステークホルダーに対するコスト&ベネフィットをあと少しだけ時間をかけて話し合っても良かった気がする。30年以内にM7以上の東海大地震が起きる可能性は87%だと言われている。
こういう確率は年で平均出来るのかどうか分からない。最初の10年が50%、残り20年が…という風になるのか、あるいは逆に最初の10年が10%、残り10年が20%、最後の10年が…という計算になるのだろうか?その辺分からないので単純に30年で割るとこの1年間で起きる可能性は3%以下だ。
3か月だとすると0.7%で相当低い確率だ。3カ月あれば電力需要がピークになる夏の状況、影響の正確なシュミレーションが可能だ。その3ヶ月間にありとあらゆる議論を尽くしても良かったのではないかと思った。
総理大臣でも社長でもリーダーの決断は重い。決断すること自体は評価するべきだと思う。だからこそ尚更決断するまでに許される時間をしっかりと見積もって、限りなく想定出来得る事を考えて決断すべきだと思う。早い事は大事だが早すぎる必要は無い。
国としての総合力を試されると同時に個のリーダーとしての力量も試される時代になってきたのだなとつくづく感じる。