こちらは、妄想のお部屋です。
BL要素が含まれる場合がありますので、ご注意ください。
「桜愛ちゃんは、将来、何をしたいの?
その学校で、何を学びたいの?」
「あの、それが、お母さんにも言い辛くて、はっきり言えなかったんです。」
え?花屋を継ぐ為に専門学校に行くんじゃないのか?
智は、どうしてそんな質問を?
「私、おばあちゃんみたいなお花の先生になりたいんです。
お花が一番美しく見えるように生けるとか、生徒さんひとりひとりにじっくりと指導する、そんなおばあちゃんを尊敬してるんです。
今日だって、生徒さんの結婚式に呼ばれてる、素敵なおばあちゃんなんです。
だから、おばあちゃんに生け花を習いながら、専門学校でお花の知識や、洋風のアレンジメントの技術を覚えたいんです。」
そうか、お母さんに遠慮して、本当の気持ちが言えなかったんだ。
家業の花屋を継がなくていいと言われてきた、でも教師になって欲しそう、なのに本人は、どちらでもない道を選びたいのか。
「素敵だと思うよ。
ねぇ、お母さんに本当の気持ちを伝えてみたら?
応援してくれると思うよ。」
桜愛ちゃん、表情がすっきりしてる。
「はい。でも、上手く言えないし、今ここでメールしてもいいですか?」
「もちろん。ゆっくり文章を考えてみて。」
智の言葉に、桜愛ちゃんは頷いて、スマホを操作し始めた。
作った文章を読み上げて、智が少し直してあげてから、送信した。
「ふう、緊張した。」
桜愛ちゃんは、そう言いながら、プリンアラモードの残りを食べ、クリームソーダを飲んだ。
「炭酸、抜けちゃったんじゃない?」
「ううん、大丈夫です。
でも、今日はカロリー取りすぎたかも。」
ピロン!
「あ、返信来た。」
桜愛ちゃんが、スマホを見せてくれた。
《そうだったのね
私達に気をつかって花屋を継ぐのかと思った
学校の教員でなくても、誰かを教え導きたいなんて、お母さん嬉しいわ
素敵な師匠目指してね
ところで、夜ご飯食べるよね?
シチューよ》
智がスマホを返しながら、微笑んだ。
「良かったね。
梅おばあちゃんも喜ぶと思うよ。
お腹空いてきたなぁ。
ウチもシチューにしようかな?」
桜愛ちゃんが立ち上がって、頭を下げた。
「今日はありがとうございました。
話を聞いてもらって、気持ちの整理がついて、お母さんにも伝える事が出来ました。
あの、お金、払います。」
お財布を出そうとした桜愛ちゃんを、智が止めた。
「営業時間が終了してるから、レジが使えないんだ。
新商品候補の試食をしてもらったから、代金差し引きで。」
智が、同意して欲しそうに俺を見た。
「そうだね、試食してもらったからね。
このスイーツが販売出来るか、貴重な女子高生の意見が聞けて良かったよ。」